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心臓手術時のアプロチニン投与は腎不全リスクを高めるか
オフポンプ手術を受けるACE阻害薬使用者で高リスク

 心臓手術の際に出血量を抑える目的で使用されるアプロチニンを、アンジオテンシン転換酵素阻害薬(ACE阻害薬)を使用していてオフポンプ手術を受ける患者に投与すると、腎不全リスクが2.87倍になることが示された。英国Bristol Royal InfirmaryのRonelle Mouton氏らの報告で、詳細はLancet誌2008年2月9日号に掲載された。

 2007年11月、英Bayer社はアプロチニンの販売を自主的に中止した。心臓手術を受けるハイリスク患者約3000人を対象にカナダで行われた臨床試験BARTの予備的な結果が、トラネキサム酸またはアミノカプロン酸を投与された患者に比べ、アプロチニン投与群の死亡率が高いことを示したためだ。試験は2007年10月に終了しており、結果の分析が完了するまで販売は一次的に中止されている。

 アプロチニンはセリンプロテアーゼ阻害薬で、抗炎症、抗線溶作用、血小板機能温存などの作用を持つ。複数の無作為化試験で、アプロチニンが心臓手術の際の輸血の必要性を下げることが示されている。その一方で、腎不全との関係が懸念されていた。心臓手術後の腎不全は死亡率上昇をもたらす。

 先ごろ行われた小規模試験で、オフポンプの冠動脈バイパス術の術後腎不全罹患率は、オンポンプの場合に比べ有意に低いことが示唆された。また、心臓手術を受ける患者にしばしば用いられているACE阻害薬の使用は、腎還流圧を下げることにより腎不全の発生を促す可能性がある。

 こうした複雑な状況の中、著者らは心臓手術を受ける患者の腎不全に対するアプロチニンの影響を調べるため、2000年1月1日から2007年9月30日の間に、オンポンプまたはオフポンプで心臓手術を受けた患者を対象に、後ろ向き観察研究を実施した。

 条件を満たした9106人のうち、5434人がオンポンプ、3672人がオフポンプで手術を受けていた。また7089人に抗線溶薬(5755人がトラネキサム酸、1334人がアプロチニン)が投与され、2017人には投与されていなかった(対照群)。術後腎不全は、血清クレアチニン値が200μmol/L超で、術前の値の1.5倍以上になった場合とした。

 予想通り、統計学的に有意な差がグループ間に存在した。アプロチニンはハイリスク患者(再手術や緊急手術、不安定狭心症、緊急入院、左室駆出分画が低いなど)に多く用いられており、術後腎不全罹患率と院内死亡率は対照群より有意に高かった。一方、トラネキサム酸投与群と対照群の間には、術後腎不全罹患率と院内死亡率に差は見られなかった。

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