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JAMA Otolaryngol Head Neck Surg誌から
デキサメタゾン術前投与は甲状腺摘出後の低カルシウム血症と音声障害を減らす
パキスタンで行われたランダム化比較試験

 英国Royal Infirmary Hospital Edinburgh のAdeel Abbas Dhahri氏らは、甲状腺摘出手術を受ける患者の術前にデキサメタゾンを投与すると、術後の低カルシウム血症や音声障害のリスクを減らすことができたと報告した。結果は2021年9月2日のJAMA Otolaryngol Head Neck Surg誌電子版に掲載された。

 良性甲状腺疾患は一般的な病気だが、ヨウ素欠乏症のある多結節性甲状腺腫などの患者は、甲状腺全摘術を必要とする場合がある。全摘術は、低カルシウム血症や音声障害、喉頭神経の損傷などを起こす可能性がある。嗄声のような音声障害は、約80%の患者に生じると報告されているが、58~100%は可逆的だ。喉頭神経の直接的または間接的な損傷であり、一過性または永続性の音声障害が生じる。

 一方、症候性の低カルシウム血症は、甲状腺全摘術後の患者の最大で50%に発生する。原因は、甲状腺とともに副甲状腺も失うことにあり、患者はカルシウムまたはビタミンD3を常用する必要がある。

 周術期のステロイド使用が、術後の音声障害を予防することは示されており、デキサメタゾンの投与を支持するエビデンスも得られている。また、低カルシウム血症の予防法も複数考案されており、その1つが周術期のデキサメタゾン投与だった。そこで著者らは、術前にデキサメタゾンを単回投与することで、術後の音声障害と低カルシウム血症を減らせるという仮説を立てて検証することにした。

 このランダム化比較試験は、2014年1月から2019年12月31日に、パキスタンRawalpindi医科大学の施設であるHoly Family Hospitalで実施された。組み入れ対象は、良性の甲状腺疾患がある18~60歳の患者で、以前に低カルシウム血症や音声機能障害の治療を受けたことがない人とした。甲状腺や頸部の手術を受けたことがある人、クレーブス病の病歴がある人、胃食道逆流や胃潰瘍がある人、ステロイドの禁忌に該当する人などは組み入れから除外した。

 条件を満たした患者は、ランダムにデキサメタゾン群とプラセボ群に割り付けた。デキサメタゾン群には、麻酔導入前に60分掛けて8mgのデキサメタゾンを静注した。プラセボ群には同様に生理食塩水を静注した。術前に、参加者の血清カルシウム値を検査し、主観的なスコアであるVoice Analog Score(スコア幅は0~100で50未満を音声障害と評価)を評価した。

 主要評価項目は、手術後の低カルシウム血症(補正血清カルシウム値が8mg/dL未満)と音声障害とした。副次評価項目は低カルシウム血症の症状とした。皮膚の縫合が終了した時点を手術終了とし、24時間後に血清カルシウムと音声スコアを評価した。低カルシウム血症が見つかった患者は症状に応じた治療を行い、72時間後の時点でもう一度血清カルシウム値を検査した。

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