日経メディカルのロゴ画像

JAMA Network Open誌から
被災地に派遣された自衛隊員のPTSDリスク
東日本大震災に派遣された自衛隊員のPTSDスコアを6年後まで追跡

 防衛医大の長峯正典氏らは、東日本大震災の直後に被災地に派遣された陸上自衛隊員のPTSD症状について、現地での任務終了から6年後までの状況を検討し、累積発症率は6.75%であり、本人の被災状況、長期の派遣期間、年齢が高い、派遣後の超過勤務などがPTSDの危険因子だったと報告した。結果は2020年9月29日にJAMA Network Open誌電子版に掲載された。

 震災後に災害派遣された自衛隊員は、救助活動の他に、被曝リスクのある場所での人道支援、約1万体の遺体回収などにも従事した。災害初期の派遣隊員(ファーストレスポンダー)は、生命を脅かされる可能性がある状況下で、また被災者や家族から激情をぶつけられる中で、任務を遂行した。そうした経験は、共感性疲労や代理受傷を引き起こす可能性があり、これによりPTSDリスクは高まると予想された。

 ファーストレスポンダーに対するメタアナリシスでは、明らかなPTSDの発症率はおおよそ10%と報告されている。しかし、PTSD症例の4分の1は、事件直後ではなく6カ月以上時間が経過してから発症することが報告されているため、ファーストレスポンダーのPTSD症状の発現について理解を深めるためには、長期にわたって追跡する研究が必要だ。しかし、ファーストレスポンダーに対する研究の多くは、横断研究だった。

 著者らは先に、東日本大震災後に派遣された陸上自衛隊員約7万人を対象とする1年間の調査を行っていた。今回はそれらの人々の健康状態を2017年まで追跡し、震災から6年後までの状況をまとめるためのコホート研究を計画した。

 定期的な健康状態評価を行い、6年後までの追跡を完了したのは5万6388人だ。彼らは任務完了から1カ月後、6カ月後、12カ月後、36カ月後、48カ月後、60カ月後、72カ月後に評価を受けていた。ベースラインでは、社会人口学的要因(年齢、性別、階級、本人の被災経験)などと、災害派遣時の経験(遺体の回収、被曝リスク下での任務など)、勤務状況(派遣期間、任務終了後の退職、派遣終了後の超過勤務など)に関する情報を収集した。

 主要評価項目は、PTSD症状を評価するIES-Rスコアとした。日本人ではスコアが25以上はPTSDリスクが高いとされており、今回の分析ではスコア25~88をPTSD疑い例とした。またCox比例ハザードモデルを用いて、PTSD疑い例に関係する危険因子を同定した。時間的傾向を調べるため、PTSD疑い患者は3群に分類することにした。スコアが25未満になった回復群、スコア25以上が続く継続群、一度25未満になったが再度25以上になった再発群。

この記事を読んでいる人におすすめ