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JAMA Pediatrics誌から
妊婦の心理的苦痛が胎児の脳に与える影響は?
胎児の先天性心疾患が見つかった場合の脳MRI画像を調べた研究

 胎児に先天性心疾患(CHD)が見つかると、妊婦の心理的苦痛は高まる。これが胎児の脳の発達に影響するのではないかと考えた米国Children's National Health SystemのYao Wu氏らはケースコントロール研究を行った。胎児にCHDが見つかった妊婦と、健康なボランティア妊婦を対象に、ストレス、不安、抑うつの有病率や、胎児の脳のMRI画像を比較したところ、心理的苦痛が大きい妊婦の胎児では、脳の海馬と小脳の容積が有意に小さかったと報告した。結果は、JAMA Pediatrics誌電子版に2020年1月13日に掲載された。

 CHDの新生児に認められる脳の発達の障害は子宮内で生じているという認識が広まっている。著者らは先に、CHDの胎児には、脳の発達、脳回形成などに異常が見られることを示していた。妊娠中に胎児がCHDを有することが判明すると、妊婦のストレスは大きくなる。妊婦の抑うつ、不安、ストレスは、胎児の脳の正常な発達を妨げ、脳の皮質の菲薄化や小脳扁桃の変化を生じさせ、海馬の発達、脳の微細構造、機能的神経回路の形成などに悪影響を及ぼし、児の認知機能や情動などにも影響することが示唆されていた。

 著者らは、胎児にCHDが見つかった妊婦の、ストレス、不安、抑うつの有病率を明らかにし、胎児の脳のMRI画像を利用して、妊婦のストレス、不安、抑うつが児の脳の発達に及ぼす影響を定量的に検討するために、ケースコントロール研究を計画した。

 対象は、2016年1月から2018年9月までにChildren's National Health Systemを受診した妊婦で、エコー検査を受け胎児にCHDが見つかった人。対照群は健康なボランティアの妊婦を選んだ。CHD以外の先天異常が見つかった場合、妊娠合併症のある女性、MRIの禁忌に該当する場合、多胎妊娠の女性は組み入れから除外した。

 参加者は妊娠21週から40週までに2回、胎児のMRI検査を受けてもらった。T2強調画像の三次元再構成を行って、胎児の全脳、大脳、左海馬、右海馬、小脳、脳幹の容積を算出した。

 母親の心理的苦痛の程度は、Perceived Stress Scale(PSS;スコア幅は0~40で高スコアほどストレスは大きい)、Edinburgh Postnatal Depression Scale(EPDS;10項目からなる。スコア幅は0~30で、高スコアほど抑うつ症状は深刻)、Spielberger State-Train Anxiety Inventory(状態不安はSSAI、特性不安はSTAIスコアで示す。どちらもスコア幅は20~80で、高スコアほど不安は大きい)を用いて、MRI検査と同じ日に評価した。

 胎児にCHDが見つかった妊婦48人(男児29人女児19人)と健康な妊婦92人(男児50人女児42人)が研究に参加した。胎児140人から223回分の画像を撮影した。CHDを有する胎児48人には74回、92人の健康な胎児には149回の検査が行われていた。実施時期の平均は、CHD児が32.1週、CHDではない児は32.4週だった。

 CHDのほとんどが妊娠中期にCHDと診断されていた。CHDを有する胎児48人のうち17人(35%)は心室が1つの中隔欠損、19人(40%)は大動脈閉鎖で、8人(17%)が大血管転位と診断されていた。

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