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JAMA Intern Med誌から
ブラジル旅行者への注意事項をCDCが発表
ワールドカップ、オリンピックによる急増に控え、感染症などへの対策示す

 ブラジルでは、2014年にFIFAワールドカップ、2016年には夏季オリンピックパラリンピックが開催され、世界中から旅行者が押し寄せることが予想されている。米疾病対策センター(CDC)のJoanna Gaines氏らは、ブラジル旅行者自身とかかりつけ医が留意すべき注意事項を、JAMA Internal Medicine誌電子版に2014年6月2日に発表した。

 国内外から多くの人々が集まるワールドカップやオリンピックでは、感染症が広がりやすく、衛生状態やセキュリティーの一時的な低下が生じやすい。2008年にワールドユースデー(青年カトリック信者の年次集会)が開催されたオーストラリア・シドニーでは、少なくとも6種類のインフルエンザウイルスがアウトブレイクを生じた。1996年に開催されたアトランタ五輪では1000人を超える人々が熱中症で治療を受けた。

 CDCは、ブラジル旅行者に対して、出発前4~6週の時点で医療従事者に相談し、旅程に合わせた最新の情報を得ることを推奨している。ブラジル滞在中または帰国後に発熱した患者は、速やかにかかりつけ医を受診すべきである。

 一方、そのような患者を診察する医師に対して、ブラジル訪問により、どのような疾患の罹患リスクがあるかを呈示する目的で、今回著者らは、ブラジル渡航に伴う健康上、安全上の懸念について、ピアレビュー誌に掲載されている文献と、灰色文献(政府や学術機関、企業などが発行する出版物に掲載されている文献)を対象にレビューを行った。以下が、レビューに基づくCDCの推奨である。

感染症リスクと推奨される予防策
 ブラジルでは、ワクチン(インフルエンザMMRDPT水痘)で予防可能な疾患が流行しているため、渡航前にこれら全てのワクチン接種を受けているかを確認する。

 A型肝炎(HAV)のブラジル国内での罹患率は地域によって異なるが、2000~2005年発症率は10万人当たり7.5~11だった。HAVは、食物、水、ヒト・ヒト接触により広まるため、全ての旅行者はHAVワクチンの接種を受けてから渡航すべきである。HAVワクチンは2回接種が必要だが、出発までに1回目の接種を受けていれば、多くは感染を回避できるだろう。

 B型肝炎(HBV)キャリアは、ブラジル人口の2~7%を占めるといわれている。HBVは血液などの体液を介して感染する。出発までにできるかぎり予防接種を受けておくことが望ましい。

 ブラジルでは、汚染された食物や水を介した腸チフスの感染が懸念される。腸チフスは重症化すると腸管出血や穿孔を生じ、死亡リスクもある。パラチフスは腸チフスより軽症だが診断が難しい。いずれも、感染疑い例には、診断が確定するまで、広域スペクトルの抗菌薬を投与する。CDCはブラジルへの旅行者全員にチフス熱(Typhoid Fever)ワクチンの接種を推奨している。パラチフスに対するワクチンはないため、食物や飲料に注意を怠らないことが予防策になるという。

 黄熱は、黄熱ウイルスに感染した蚊が媒介する。最悪の場合、死に至る感染症である。ブラジル国内で、黄熱ウイルスの感染リスクがある地域を訪れる生後9カ月以上の旅行者には、黄熱ワクチンの接種が推奨される。

 また、蚊に刺されることを防ぐため、虫除けを使用する、ペルメトリン(殺虫剤)処理された長袖衣類を身につける、宿泊ではエアコンが設置された部屋を選ぶ、殺虫剤処理された蚊帳の中で眠る、といった対策を実践することが大切だ。黄熱ウイルスの予防接種を受けずにブラジルに旅行した患者が、帰国後に発熱した場合は黄熱を疑うべきである。

 ブラジルではNeisseria meningitidis感染によって生じる髄膜炎が流行している。アウトブレイクは主に血清型BとCによって発生している。感染が疑われた患者には広域スペクトルの抗菌薬を用いた積極的な治療が必要である。米国で利用可能なワクチンは血清型Bには効果がない。混雑した室内空間では、呼吸器分泌物を介した感染が起こり得るため、結合型髄膜炎菌ワクチンの接種が利益をもたらす可能性がある。

 狂犬病ウイルスは急性で進行性の致死的な脳脊髄炎を引き起こす。通常は感染動物に咬まれることにより感染するが、感染したコウモリがいる洞窟内の空気を介した感染もまれに生じる。曝露リスクが高いと予想される地域を訪れる旅行者や、動物との接触が予想される旅行者には、狂犬病ワクチンの3回接種が推奨される。ただし、出発までに接種が終了しない旅行者には接種は推奨されない。狂犬病は致死率が高い疾患であり、ワクチンの効果が完全ではないことからも、感染を回避する方法を出発前に学び、曝露した場合には速やかに咬傷を洗浄するなどの処置を行った上で、医療機関を早急に受診する必要がある。

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