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JAMA誌から
ICUで輸液のCl濃度を下げると急性腎不全が減少

 ICUに入院した患者が急性腎不全(acute kidney injury;AKI)を発症するリスクは高い。従来から用いられているクロライドCl)濃度の高い輸液の適用が急性腎不全リスクを高めている可能性があると考えたオーストラリアMonash大学マレーシアSunway校のNor’azim Mohd Yunos氏らは、ICUで用いる輸液をクロライド濃度の低いものに変えると、急性腎不全リスクが低下することを明らかにした。論文は、JAMA誌2012年10月17日号に掲載された。

 ICUでは通常、クロライドを含む輸液が用いられる。補水や蘇生などに用いられる溶液も、多くが生理的な濃度を超えるクロライドを含んでいる。それらは、高クロール血症や代謝性アシドーシスを誘発または悪化させて、腎機能を低下させる可能性がある。著者らは、重体の患者の急性腎不全リスクが高いこと、クロライドの投与と腎機能低下の関係が示唆されていることから、ICUでクロライド投与量を制限する輸液戦略を用いれば、重体の患者の急性腎不全罹患を減らす、または重症度を軽減できるのではないかと考えた。

 この予備的な前向きビフォーアフター研究は、22床の集学的ICUを運営しているメルボルン大学付属病院で実施した。

 08年2月18日から8月17日までを対照期間、09年の2月18日から8月17日を介入期間とした。対照期間にICUに入院した760人の連続する患者、介入期間にICUに入院した773人の連続する患者を研究対象にした。

 対照期間には、標準的な輸液(0.9%生食、4%サクシニルゼラチン溶液、4%アルブミン)を用いた。対照期間終了時点から09年2月17日までの6カ月の移行期間を経て、介入期間には、クロライド濃度が標準的な輸液は、専門医が処方した特別な症例(低ナトリウム血症、外傷性脳損傷、脳浮腫など)にのみ適用可能とした。それ以外の患者には、いずれもクロライド濃度の低い、乳酸リンゲル液(ハルトマン液)、緩衝液(Plasma-Lyte 148)、20%アルブミンを用いた。

 主要転帰評価指標は、ベースラインの血清クレアチニン値とICU入院中の最高値の差(上昇幅)と急性腎不全罹患率に設定。2次評価指標は、腎代替療法(RRT)の必要性、ICU入院期間、入院期間、生存率などとした。

 ベースラインの血清クレアチニン値は、ICU入院前1カ月間の最低値とした。測定値が得られなかった場合は、正常なGFRの下限を75mL/分としてMDRD計算式を用いてクレアチニン値を推定した。急性腎不全の診断は、血清クレアチニン値の上昇と尿流量低下を指標に重症度を判定し、患者を層別化するRIFLE(Risk、 Injury、Failure、Loss、End-stage renal failure)分類に基づいて行った。

 対照期間のICU入院患者760人(平均年齢60歳、男性61%、ベースラインの血清クレアチニン値は90μmol/L)と、介入期間のICU入院患者773人(平均年齢60.5歳、男性62%、ベースラインのクレアチニン値は86μmol/L)に投与された患者1人当たりのクロライドの量は、対照期間が694mmol、介入期間は496mmolだった。対照期間に比べ介入期間では、患者1人当たりの輸液を介したナトリウムの投与量が750mmolから623mmolに減少した。一方、カリウムの投与量は3.5mmolから22mmolに、乳酸の投与量も18mmolから120mmolに増加していた。

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