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JAMA誌から
抗けいれん薬の使用で自殺リスクが上昇

 米食品医薬品局(FDA)は2008年、抗けいれん薬全般に対して、自殺企図と自殺行動のリスク上昇を知らせる警告表示を加えるよう指示した。米Harvard大学のElisabetta Patorno氏らは、抗けいれん薬について、個々に自殺行為(自殺企図または自殺完遂)と暴力死との関連を調べ、リスク上昇をもたらす可能性のある薬剤を示した。論文は、JAMA誌2010年4月14日号に掲載された。

 抗けいれん薬には、化学構造と作用機序が異なる複数種類の薬剤が含まれている。主にてんかん治療に用いられるが、双極性障害や躁病、神経痛、片頭痛、神経障害性疼痛などへの適用も許可されている。また、適応外使用も増加している。 

 FDAの先の判断は、メタ分析の結果に基づくものだった。このメタ分析は、抗けいれん薬11剤を対象とする199件の比較試験について分析し、「偽薬使用群に比べ抗けいれん薬使用群の自殺行動または自殺念慮のリスクは約2倍」と報告していた。ただし、個々の薬剤のリスクが評価できる規模の研究ではなかった。

 そこで著者らは、自殺行為(自殺企図または自殺完遂)や暴力死(Violent Death:殺人、災害、事故などによる死亡)のリスクと個々の抗けいれん薬との関係を調べるコホート研究を実施した。暴力死も評価対象にした理由は、外傷または事故による死亡の一部または多くが、実は自殺である可能性があるためだ。

 米国14州の医療保険加入者の医療記録や処方記録を登録しているHealthCore Integrated Research Database(HIRD)から、15歳以上で01年7月から06年12月までに抗けいれん薬(カルバマゼピン、エトスクシミド、フェルバメート、ガバペンチン、ラモトリギン、レベチラセタム、オクスカルバゼピン、フェノバルビタール、フェニトイン、プレガバリン、プリミドン、ティアガビン、トピラマート、バルプロエート、ゾニサミド)の使用を開始していた人々を選出。過去6カ月間に抗けいれん薬使用歴がない人々を選んだ。複数の抗けいれん薬を使用した患者、自殺企図歴がある患者、自殺リスクに影響すると考えられる疾患(癌、エイズなど)の患者や長期入院患者は除外し、29万7620人を分析対象とした。

 比較のための参照薬を選ぶのは難しかった。第1参照薬はトピラマートとした。適用症例数が2番目に多く、適応範囲が広いためだ。しかし、この薬剤はてんかんに用いられる頻度が低い。そこで、てんかんに対する第1選択として処方されることが多いカルバマゼピンを第2参照薬とした。

 追跡期間は、初回の処方を受けた日から(1)最長180日、または(2)治療中止もしくは薬剤変更まで、(3)エンドポイントに設定されたイベントが発生するまで、(4)エンドポイントに設定されたイベント以外の原因による死亡まで、(5)医療保険から脱退するまで、のいずれかとした。360日まで追跡した二次分析も行った。

 Cox比例ハザードモデルと傾向スコアがマッチした患者を比較する分析を行い、自殺行為(自殺企図または自殺完遂)のリスク、複合自殺行為(自殺完遂、自殺企図、暴力死)のリスクを評価した。精神科領域の併存疾患(双極性障害、不安障害、精神病性障害、薬物濫用、せん妄、認知症など)、さまざまな神経疾患、その他の危険因子候補などで調整した。

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