大豆食品は、植物エストロゲンのイソフラボンを豊富に含む。一方、女性ホルモンのエストロゲンは、乳癌の発生と進行に大きくかかわることが知られている。では、乳癌サバイバーが日常的に大豆製品を摂取すると、臨床転帰にどのような影響が及ぶのだろうか。
米Vanderbilt大学のXiao Ou Shu氏らは、中国の乳癌サバイバーを対象とする最大規模のコホート研究を実施して、大豆食品の日常的な大量摂取が、総死亡と乳癌再発のリスクを低減することを明らかにした。ただし、中国人の大豆食品摂取量は日本人よりかなり多いことに留意する必要がある。詳細は、JAMA誌2009年12月9日号に報告された。
イソフラボンは体内でエストロゲンと拮抗するため、乳癌リスクを下げると考えられてきた。しかし、乳癌を発症した女性に対する作用は明らかではなかった。
また、乳癌の治療にエストロゲンの作用を遮断するタモキシフェンなどが用いられること、in vitroとin vivoの実験でイソフラボンがタモキシフェンと相互作用を起こす可能性が示されたことから、乳癌サバイバーが発症前と同様に大豆食品を摂取してよいのかどうかを明らかにする研究の実施が求められていた。
著者らは、上海市癌登録に登録されている乳癌患者の中から、外科的治療を受けており、エストロゲン受容体の過剰発現の有無とタモキシフェン投与歴が明らかな女性を選出し、乳癌診断後の大豆食品摂取と総死亡、癌再発の関係を調べた。
20~75歳で、02年3月から06年4月に乳癌の診断を受け、診断から約6カ月が経過している女性5042人を登録、09年6月まで追跡した。
登録時に、癌の診断と治療、癌診断後のライフスタイル、病気の進行に関する情報を構造的質問票を用いて収集。診断から18カ月時、36カ月時、60カ月時にも同様に調査した。
同時に食物摂取頻度調査を実施。6カ月の時点では過去6カ月間、18カ月の時点では過去12カ月間、36カ月の時点では過去18カ月間の食習慣を尋ねた。肉、魚、アブラナ科の野菜などとともに大豆食品の摂取量を調べて、大豆たんぱく質の摂取量とイソフラボン摂取量を推定した。
主要アウトカム評価指標は、総死亡と、乳癌再発または乳癌関連死亡に設定。既知の予後予測因子やほかのライフスタイル要因(診断時の年齢、TMNステージ、適用された治療、BMI、閉経前か後か、エストロゲン受容体とプロゲステロン受容体の発現状況、タモキシフェン使用の有無、学歴、収入、アブラナ科野菜の摂取、肉の摂取、ビタミンサプリメントの摂取、茶の摂取、運動量など)で調整し、Cox比例ハザードモデルを用いて分析した。
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