乳癌の外科的切除後に持続する疼痛と知覚障害(異痛、痛覚過敏、残感覚、感覚消失など)は、患者にとって大きな問題だ。デンマークCopenhagen大学のRune Gartner氏らは、横断的な調査研究を実施し、乳癌手術後の患者の47%が持続的な疼痛を、58%が知覚障害を経験しており、疼痛を訴える患者の約半数が中程度から重度の痛みに苦しんでいることを明らかにした。論文は、JAMA誌2009年11月11日号に掲載された。
乳癌手術後の疼痛や知覚障害の発症機序は複雑で、患者の特性、手術手技、術後補助療法などの影響を受けると考えられている。
著者らは、近年の術式の変化(乳房温存療法やセンチネルリンパ節生検の適用増)や術後補助療法の変化が、術後の疼痛や知覚障害の罹患率に影響を及ぼしている可能性を考え、最新の情報を得たいと考えた。
そこで、Danish Breast Cancer Cooperative Group(DBCG)が管理しているデータベースを用いて条件を満たす患者を選出し、質問票を送付する調査研究を行うことにした。
DBCGのデータベースは、詳細な臨床データ、組織病理学的分析結果、適用された治療、臨床転帰などの情報を前向きに登録している。その中から、片側乳房の原発性乳癌と診断され、05年1月1日から06年12月31日に手術と術後補助療法を受けた18~70歳の女性を選出した。標準的な治療以外が適用された患者、乳房再建を受けた患者、再発した、または新たな乳癌もしくは別の癌を発症した患者、死亡した患者などを除いた3754人を対象とし、2008年1月から4月に質問票を送付した。
質問項目の概要は、以下の通り。
痛みの場所は、乳房、腋窩、腕、治療を受けた乳房の側の半身のいずれかから選択。
痛みの程度は、0~10ポイントで記入するよう依頼(0は無痛、10は想像しうる最悪の痛みとし、1~3は軽度、4~7は中程度、8~10は重度に分類)。
痛みの頻度は、毎日またはほぼ毎日、週に1~3日、それより少ない、のいずれかから選択。
さらに、手術部位の痛みによる受診、鎮痛薬の使用、それ以外の疼痛治療の利用、乳癌とは無関係な場所の痛みなどについても尋ねた。
アウトカム評価指標は、持続性疼痛の有病率、痛む場所、痛みの重症度、知覚障害の有病率などに設定。加えて、年齢、手術手技、化学療法、放射線治療などの中から、持続性疼痛と知覚障害の危険因子を探した。
質問票を送付した患者の87%に当たる3253人から回答を得た。調査時点で手術から平均26カ月が経過していた。
患者に適用された治療は、(1)乳房温存療法(センチネルリンパ節生検=SLNDまたは腋窩リンパ節郭清=ALNDを実施)後に放射線治療と化学療法のいずれかまたは両方、(2)乳房切除術(SLNDまたはALNDを実施)のみ、(3)乳房切除(SLNDまたはALND)後に放射線治療と化学療法のいずれかまたは両方―の12通りに分類できた。
新規に会員登録する
会員登録すると、記事全文がお読みいただけるようになるほか、ポイントプログラムにもご参加いただけます。