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造血幹細胞移植で神経難病の進行抑制に成功
治療効果の得やすい早期患者の拾い上げを実地医家に期待

2020/01/17
小崎丈太郎=医学ライター

 東京大学医学部附属病院22世紀医療センター分子神経学講座特任教授の辻省次氏、同助教松川啓司氏、同病院血液・腫瘍内科教授の黒川峰夫氏らのグループは、成人期発症の大脳型副腎白質ジストロフィー患者を対象に造血幹細胞移植を発症早期に行うことで、進行を強力に食い止められるとの研究結果をまとめ、2020年1月14日付けの国際科学雑誌Brain Communication誌に報告し、同日、記者会見を行った。

 副腎白質ジストロフィー(ALD)はX染色体上にあるABCD1遺伝子の変異を原因とする指定難病の1つ。これまで、小児型の大脳型副腎白質ジストロフィーに対して、発症早期に造血幹細胞移植を行うことで予後が改善することが知られていた。しかし、国内に約120人の推定患者がいる成人期発症の大脳型副腎白質ジストロフィーについては、造血幹細胞の治療効果に関する研究はなかった。

 そこで同グループは、血縁者または日本骨髄バンクに登録されているドナーの骨髄から得た造血幹細胞を成人期発症の大脳型副腎白質ジストロフィー患者に移植し、発症早期に移植した移植群12例と、非移植群の8例で生存期間などの長期予後を比較した。

 その結果、移植群12例のうち9例では移植後2カ月以内に脳病変の拡大が止まり、残る3例も12カ月以内に拡大停止を認めた。しかも7例では脳病変の縮小も認めたという。大脳・脳幹・小脳病変の出現から150カ月を経過した時点で、移植群は100%生存しているのに対して、非移植群では6例が死亡した(p=0.0089)。この6例は、大脳・脳幹・小脳における病変の出現から中央値69.1カ月で死亡しており、残る2例も進行して車椅子が必要な状態になった。

 移植群では5例に移植片対宿主病(GVHD)が出現したが軽度でコントロール可能だった。

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