日経メディカルのロゴ画像

NEWS◎鼓膜穿孔再生用の治療薬が世界で初めて承認
鼓膜穿孔の治療は今後、手術でなく外来で
聴力回復効果も高い

線維芽細胞増殖因子を使った鼓膜再生療法の開発を進めてきた北野病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科主任部長の金丸眞一氏

 「今後、鼓膜穿孔に対する治療は手術ではなく、外来で簡単にでき、高い聴力回復も期待できる鼓膜再生療法が主流となるだろう。現状の手術の多くはこの鼓膜再生療法に置き換わるのではないか」。12月12日、田附興風会医学研究所北野病院(大阪市北区)耳鼻咽喉科・頭頸部外科の金丸眞一氏らが記者会見を行い、自ら開発を進め、11月に承認されたトラフェルミン製剤(商品名リティンパ)を使った鼓膜再生療法への期待を語った。トラフェルミン製剤を使った鼓膜再生療法は世界で初めて日本で承認された、日本発の治療法だ。

 慢性中耳炎や外傷などが理由で起こる鼓膜穿孔があると本来の音の伝導経路以外のルートができてしまうため、蝸牛内で音がぶつかり合ってキャンセル効果が起こってしまい、音が聞き取りにくくなる。補聴器を使用すると音は大きくなるものの、キャンセル効果も大きくなるため、鼓膜穿孔患者は補聴器の効果が十分でなかった。また難聴は認知症のリスク因子であり、鼓膜穿孔などの治療可能な難聴は積極的な治療が望まれる。「より良い聞こえを得るためには鼓膜閉鎖が必要だ」(金丸氏)。日本には鼓膜穿孔を有する患者は100万人以上と推定される。

 ただし治療はこれまで鼓室形成術や鼓膜形成術といった手術しかなく、数日から2週間程度の入院も必要だ。手術は耳後を切開し、自己組織を採取して鼓膜を形成するため侵襲が大きい。聴力回復も十分ではないといった課題があった。

 そこで金丸氏らは2003年頃から、この手術に代わる鼓膜再生の研究に着手した。鼓膜は皮膚層、中間層、粘膜層の3層構造で、鼓膜の周囲には鼓膜前駆細胞や組織幹細胞が存在するため、穿孔しても自然に再生しやすい組織だ。しかし、中には再生せず、穿孔したままのケースも少なくない。再生しない理由はまだ十分に解明されていないが、「皮膚層や粘膜層に比べて中間層の線維芽細胞の増殖速度が遅いため、皮膚層や粘膜層が先に伸長し、中間層の先端を蓋してしまうことで増殖が止まり、鼓膜の再生がそれ以上進まないのではないか」(金丸氏)といった理由が想定されている。

 鼓膜の孔の周囲を傷つけると休止している前駆細胞や幹細胞が活動を開始するため、「あとは足場と成長因子を足してやれば鼓膜は再生されると考えた」と金丸氏は言う。

この記事を読んでいる人におすすめ