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学会トピック◎第78回日本脳神経外科学会学術総会
常時待機の脳卒中救急で医師の疲弊をどう防ぐ
血栓回収療法の普及に対応できるシステムの構築が必要に

 急性期脳梗塞に対する血栓回収療法の有効性が証明され、我が国でも血管内治療の全国的な普及を目的とした脳卒中センターの指定が始まろうとしている。しかし、24時間365日の対応が求められる上、血栓回収療法を行う日本脳神経血管内治療学会(JSNET)専門医はまだ少ない。第78回日本脳神経外科学会学術総会(会期:10月9~12日、開催地:大阪市)で、「血栓回収療法全盛時代―血管内治療医が疲弊しないシステム構築」というテーマでシンポジウムが開催された。

 最初に登壇した神戸市立医療センター中央市民病院脳神経外科の今村博敏氏は、自施設での取り組みから、大都市部でスタッフが疲弊しない脳卒中救急に必要なマンパワーを考察。同病院がある神戸市の人口は約150万人。救急隊から直接連絡が入る脳卒中ホットラインがあり、平均すると1日に2例は脳卒中患者が救急搬送されてくる。脳主幹動脈閉塞(LVO)で血栓回収療法を行う症例はここ3~4年で急増し、2018年は96例に及んだ。同病院では脳神経外科専門医8人、脳神経外科レジデント6人、脳神経内科医8人程度のローテートで脳卒中救急に当たっている。

 夜間の当直は脳神経外科医3人(自宅待機含む)、脳神経内科医1人、血管内治療が発生したときに指揮をとるJSNET指導医1人(原則自宅待機)の体制を組む。当直と自宅待機は連続3日を上限とし、当直明けの医師の主治医手術や外来、自宅待機、手術日前日の深夜帯の自宅待機は発生しないようにしている。このような体制での医師の1カ月当たりの拘束日数は、JSNET指導医が平日3~7日、休日3日、脳神経外科専門医は平日3~4日、休日2~3日、脳神経外科レジデントが平日7日、休日4日、脳神経内科医が平日4日、休日2日程度という。

 脳卒中救急に携わる医師にアンケートを行い現在のシステムなら何年続けられるかと聞いたところ、半数が10年は続けられると回答した。医師数に関しても、半数以上がちょうどよいとの回答だった。また自由記述欄には「医師の疲弊には医師数や患者数だけでなく、病院の受け入れ体制の充実も大きく影響する。自院はそれが恵まれている」「検査で血管内治療の適応がないと判断された症例のその後の治療を血管内治療医が続けるのは負担が大きい」「JSNET指導医の負担が大きい」といった反応があった。

 今村氏は「同時に複数症例の血栓回収療法を行う場合もある上、医師の働き方改革への対応も迫られている。こうした中、患者が多い大都市部で24時間365日救急要請を断ることなく疲弊しないシステムを維持するには、20人程度の脳卒中治療医が必要になる。そのためには脳神経内科医を始め、救急医や放射線科医、循環器内科医など関連領域の医師やコメディカルスタッフの協力が不可欠だ」と指摘した。

 発症統計がなく正確な実態は不明だが、血栓回収療法の適応となるLVOが人口10万人当たり年間20例発生しているとすれば神戸市全体では年間約300例となり、中央市民病院だけでの対応は難しい。「治療可能施設の集約化は必須だが、24時間365日の対応を行うためのマンパワーの確保は、単一の施設では限界がある。同一の医療圏内での施設間協力が重要となる」との見解を今村氏は示した。

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