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学会トピック◎第83回日本循環器学会学術集会(JCS2019)
トランスサイレチン型心アミロイドーシスに世界に先駆け治療薬登場
日本循環器学会が適正使用のための施設・医師要件を設定

慶応義塾大の福田恵一氏

 2019年3月26日、ビンダケル(一般名タファミジスメグルミン)の適応が拡大され、従来は有効な治療法が存在しなかった、野生型トランスサイレチン型心アミロイドーシスによる心筋症に対する世界初の治療薬として使用可能となった。これに伴い、日本循環器学会は「トランスサイレチン型心アミロイドーシス症例に対するビンダケル適性投与のための施設要件、医師要件に関するステーテメント」を発表し、第83回日本循環器学会学術集会(3月29~31日、開催地:横浜市)において同学会学術委員会委員長の福田恵一氏(慶応義塾大学循環器内科)が記者会見を行った。

 トランスサイレチン型アミロイドーシスは、肝臓で産生される4量体蛋白質であるトランスサイレチン(TTR)が、加齢や遺伝子変異により単量体に解離して変性を起こし、アミロイド線維を形成して全身の組織内に沈着する疾患。このうち、TTRの遺伝子異常が沈着の原因となっている家族性アミロイドーシスは、末梢神経の変性を主症状とする希少疾患で、心臓にも障害を生じる(変異型トランスサイレチン型心アミロイドーシス)。従来からビンダケルの適応であり、日本では300例程度が治療されてきた。

 一方、主に組織の老化が原因となっているのが、遺伝子変異がない野生型TTRによる老人性アミロイドーシスで、この中に心臓の障害が主症状の野生型トランスサイレチン型心アミロイドーシスがある。アミロイド線維が心筋に沈着することで、致死性の不整脈や心不全、心肥大、左室拡張障害などを引き起こし、突然死に至る場合もある。まだ実態は明らかでない部分が多いが、高齢者の心肥大や心不全症例の中にも潜在的に存在している可能性が指摘されており、「患者数は数万人規模である可能性がある」(福田氏)。しかし、これまでは有効な治療法がなく、ビンダケルの適応でもなかった。

 トランスサイレチン型心アミロイドーシス患者を対象としたビンダケルの国際共同第3相臨床試験(ATTR-ACT試験)が実施され、30カ月間の追跡で総死亡と心血管イベントの有意な減少が認められた。これを受けて、3月26日に同薬の適応が拡大され、「トランスサイレチン型心アミロイドーシス(野生型及び変異型)」への投与が可能となった。これにより、野生型を含むトランスサイレチン型心アミロイドーシスによる心筋症に対する唯一の治療薬が、世界に先駆けて日本で使用可能となった。

 厚生労働省は、世界初の適応拡大であることと本薬の薬価(20mg1カプセル5万7171.7円)を鑑みて、診断と治療に精通した医師の下で、投与が適切と判断される症例に本薬を使用するよう勧告し、患者要件(囲み参照)を発出した。これを踏まえて、日本循環器学会が施設要件医師要件(囲み参照)を制定し、この3要件全てを満たすことをビンダケル投与導入の条件とした。同学会は併せて、心アミロイドーシスに関するガイドラインの策定を開始する。

 患者要件では、軽度から中等度の心不全であるNYHA心機能分類I~III度の患者を投与対象とし、重症で予後が最も不良なIV度の患者は原則として投与対象とならない。この背景には、ATTR-ACT試験の対象者がI〜III度の患者であり、追跡期間が2年を超えてからビンダケル投与群とプラセボ群とで生存率に有意差が生じたという結果がある。福田氏は「早期段階で適切に鑑別して本薬を投与できれば、特に進行を食い止めやすい」と指摘した。

 他のアミロイドーシスとの鑑別や、家族性アミロイドーシスによる神経疾患の治療のため、施設要件では血液内科や神経内科などの認定施設であることを課している。医師要件では、本薬の使用経験またはトランスサイレチン型心アミロイドーシスの診断経験があることに加え、症例の全例登録と投与後経過のモニタリングを行うことを条件としている。福田氏は「各都道府県につき1カ所以上は治療可能な施設があるはずだ。厳格な基準の下で慎重に投与が広がることで、高齢者の心不全などに隠れたトランスサイレチン型心アミロイドーシスが適切に診断・治療されるようになるだろう」と期待を示した。

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