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学会トピック◎第41回日本高血圧学会総会
SPRINT試験で注目された血圧測定法は推奨せず

帝京大の大久保孝義氏

 SPRINT試験で注目された自動診察室血圧測定法AOBP)の評価を行っていたSPRINT-Jパイロット研究から、登録時のベースラインデータによる検討結果が公表された。平均値では、AOBPは従来の診察室血圧に比べ収縮期血圧で10mmHg、拡張期血圧で4mmHg低い値だったが、測定値の特性は従来の診察室血圧に近く、精度も従来の診察室血圧や家庭血圧を超えるものではなかった。AOBPに求められる環境条件のハードルも高いことから、我が国でAOBPを標準的な測定法として推奨することは現状では困難と判断された。第41回日本高血圧学会総会の特別企画「SPRINT-J」で、帝京大学衛生学公衆衛生学教授の大久保孝義氏らが発表した。

 SPRINTではAOBPで120mmHg未満を目指した積極降圧により、140mmHg未満の標準降圧に比べ心血管イベントのリスクが25%、有意減少した。同試験により積極降圧の意義が改めて認識され、その後の米国やカナダの高血圧治療ガイドラインの方向性に、大きな影響を与えた。

 だが同試験の血圧測定法はAOBPという特殊な測定法に準じて、「患者以外いない環境下で5分間の安静後に自動的に3回測定する」という手順で行われており、従来の診察室血圧や家庭血圧との直接的な比較が困難だった。そこで、我が国における積極降圧治療の是非を検討するにはまずAOBPの評価が必要という議論になり、SPRINT-Jパイロット研究が企画された。

 SPRINT-Jパイロット研究では、高血圧の外来診療に造詣が深い3診療所で各100例の外来患者を対象に、登録時と再来時、さらに1年後に測定したAOBP、通常の診察室血圧、家庭血圧を比較する。対象患者(計308例)の平均年齢は72歳、女性比率58%、BMI 25、降圧治療中96%といった集団で、年齢、性別には施設間で差があった。

 ベースラインの血圧の平均値はAOBPが129/71mmHg、家庭血圧が128/75mmHg、通常の診察室血圧が139/75mmHgであり、AOBPは通常の診察室血圧に比べ10/4mmHg低かったが、AOBPと家庭血圧はほぼ同等だった。

 各測定値の相関を見ると、AOBPと家庭血圧では相関は非常に弱く、個々の症例によるバラツキや施設間での差異が大きかった。一方、通常の診察室血圧とAOBPには強い相関が認められ、個々の症例によるバラツキや施設間での差異も中程度だった。

 大久保氏は「今回の検討からAOBPは通常の診察室血圧に近い特性を持っており、家庭血圧とは全く別のものであることが分かった」と指摘した。

 AOBPでは測定時に医療従事者が近くにいないことで白衣効果を回避できるが、診療所で測定することから“医療環境効果”は残存する。これが通常の診察室血圧の特性に近い一因とみられた。また、AOBPは家庭血圧とは異なる特性を持つことが明らかになったが、どちらが優れているかを検証するには知見が不十分とされた。

 研究の場を提供した3施設は、診療所の空きスペースをそれぞれ工夫して、AOBPの測定場所とした。そのため測定環境の差異が、結果に影響した可能性もある。これらを踏まえ大久保氏らは「我が国の外来診療で標準的な血圧測定法として推奨するのは現状では困難で、中長期的な再現性などさらなる検討が必要」と結論した。

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