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戸田中央医科グループ医療法人横浜柏堤会の野口英一氏は「水平避難」など、実践的な避難方法を解説した。

 戸田中央医科グループ医療法人横浜柏堤会災害対策特別顧問の野口英一氏は、今春に日本病院会が作成した「病院等における実践的防災訓練ガイドライン」を基に、火災対応時の注意点を解説した。少人数のスタッフで火災対応時は特に、避難階段で下階へ患者を避難させる「垂直避難」ではなく、同じフロアの防火区画に移動・籠城する「水平避難」が有効であることをアドバイスした。6月28日、29日に石川県金沢市で開催された第68回日本病院学会の「病院における自主防災管理の実際」をテーマにしたシンポジウムで発表した(シンポジウム後半の様子はこちら:病院で火災発生!「そのとき多くの部署が『誤報』と勘違いした」)。

 同ガイドラインは日本病院会の災害医療対策委員会が作成したもので、全国消防庁会の推薦を受けている。過去の病院火災を教訓に、特に休日夜間における人員体制下での緊急対応措置に着目した実践的な防災訓練ガイドラインとしたのが特徴。ガイドラインは、(1)病院火災の特性、(2)病院の火災対策、(3)病院における火災等災害発生時の標準的な災害対応体制、(4)時系列による火災時対応行動、(5)行動計画書(避難誘導マップ)による実践的な火災対応訓練、(6)消防法の火災時対応訓練と避難誘導マップに基づく火災時対応訓練――などから構成される。

 東京消防庁の救急部長や東京防災救急協会副理事長を務めた経験を持つ野口氏は、講演冒頭、「火災の原因は放火が最も多く、どの病院でも起こる可能性がある。危険性を認識して日々準備することが大切である」と強調した。

 今年1月に韓国の世宗(セジョン)病院で発生した火災では死者47人、負傷者145人を出す大惨事があったほか、国内では、2013年に福岡市の診療所で火災が発生し、10人が死亡。2016年には全国の病院・診療所で100件の火災が起こり、死者1人が発生している。

 「消防計画通りにできなかったとき、訓練が不足していたことを指摘するケースがあるが、果たして職員をプロにするほど訓練に時間を割けるのか。また病院職員に消防職員と同じような判断・技術を求めるのは難しい。実践的な活動計画を立てるためには、病院職員の対応力に限界があることを踏まえて想定すること、病院にもともと構造上の火災対策がされていることを踏まえて対応することが大切だ」と指摘する。

 野口氏は、病院はもともと建築基準法に基づいて耐火・準耐火対策が施されているほか、延焼防止対策として防火区画や防火扉が設置されていること、避難階段が用意されていることを紹介。火災発生時には、これらの対策を活用することが大切であると説明した。

 火災が発生した際は自動火災報知装置で通報されるため、慌てて119番しなくてよいこと、スプリンクラーで初期消火が行われるため慌てて初期消火をする必要はなく、患者の避難誘導に専念してよいことなどをアドバイスした。

 休日・夜間に火災が発生した場合には、少人数のスタッフでの対応が求められる。少人数で避難誘導する際には、避難階段で下階へ患者を避難させる「垂直避難」ではなく、同じフロアの防火区画に移動・籠城する「水平避難」が有効であることを紹介した。また病棟によって異なる設計になっているため、病棟ごとに火災対応を考える必要があることも解説した。

 「事前に作成されている病棟避難誘導マップはあくまで自力歩行できる患者用だ。介助が必要な患者には役に立たず、一人ひとりの患者を背負って移動させていたのでは間に合わない。消防隊が来るまで一時的に、同じフロアの燃えていない防火区画に『水平避難』して消防隊の到着を待てばよい」と説明した。

 消防隊が119番通報を受けてから放水を開始するまでの時間は、53%のケースで10分以内、94%のケースで20分以内だ。壁が不燃材で作られていれば消防隊が病院に駆けつけるまでの時間を十分に稼げることを強調した。例えばモルタルやガラス製の場合は20分間、厚さ9mmの石膏ボードは10分、12mm以上の石膏ボードは15分ほどは遮炎できることを紹介した。

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