日経メディカルのロゴ画像

年俸制医師との雇用契約、「年俸の内訳」の再点検を
「年俸に残業割増金は含まず」最高裁が差し戻し

 神奈川県の医療法人立病院を解雇された医師が、年俸1700万円に時間外労働深夜労働割増賃金が含まれていないとして支払いを求めていた裁判で、最高裁判所第二小法廷(小貫芳信裁判長)は7月7日、医師の請求を棄却した一審、二審の判決を破棄し、東京高等裁判所に審理を差し戻す決定を下した。一方、「解雇は無効」との医師の訴えは退けた。

 最高裁に上告した医師は、2012年4月、病院や介護老人保健施設などを運営する医療法人との間で、雇用契約を結んだ。その際の契約書には、(1)年俸を1700万円とする、(2)年俸は、本給(月額86万円)、諸手当(月額合計34万1000円)、賞与(本給3カ月分相当額を基準に成績を反映)で構成する、(3)週5日勤務とし、1日の所定勤務時間は午前8時半から午後5時半までを基本とする(休憩1時間)、(4)業務上の必要がある場合には、この基本時間以外の時間帯でも勤務しなければならず、その場合は時間外勤務に対する給与は時間外規定によって定める――などが盛り込まれていた。

 また雇用契約では、時間外規定の対象とならない時間外労働や深夜労働の割増賃金については、年俸1700万円に含まれることが合意されていた。しかし、こうした割増賃金に相当する金額については、年俸の内訳で明らかにされていなかった。このため医師側は、割増賃金が年俸に含まれるという合意は無効として、割増賃金の支払いを求めていた。

 今回の最高裁判決は「支払われた年俸について、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することはできない」と認定。その上で、「残業代をあらかじめ賃金に含めて支払う場合には通常賃金との区別が必要」としたこれまでの判例に基づき、「年俸で割増賃金が支払われたとは言えない」と判断した。

 なお、医師の請求を棄却した一審の判断に対して最高裁判決は、労働基準法37条の主旨を説き、是認できないとした。労働基準法37条は、時間外労働等について割増賃金の支払いを使用者に義務付けている。最高裁は今回の判決で、「使用者に割増賃金を支払わせることによって、時間外労働等を抑制し、もって労働時間に関する法の規定を遵守させるとともに、労働者への補償を行おうとする趣旨によるものであると解される」とその主旨に言及した。雇用者による割増賃金の把握が時間外労働の抑制につながることを再確認したものとして注目すべきだろう。

この記事を読んでいる人におすすめ