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道路交通法改正で日医が認知症の診断書作成の手引き
「認知症を強固に否認するケースは警察に相談を」

 日本医師会はこのほど、3月12日の改正道路交通法施行を前に「かかりつけ医向け 認知症高齢者の運転免許更新に関する診断書作成の手引き」をまとめた。運転免許証更新に関わる診断書作成を依頼された場合の対応法について考え方を示したほか、作成時の注意点を解説。診断書の具体的な記載例なども盛り込んだ。

 現在は、日本医師会員のみに限定的に公開されており、「3月8日以降には、会員以外も閲覧できるよう一般公開する予定」(日本医師会広報担当者)。

 道交法改正で75歳以上の高齢者は運転免許証更新時の認知機能検査で「認知症のおそれ(第1分類)」と判定されると、全員が公安委員会が指定する医師(認知症専門医)による臨時適性検査を受検するか、医師による診断の提出が求められるようになる。さらに更新のタイミングにかかわらず、75歳以上の高齢者が一定の違反行為を行った場合は臨時認知機能検査が課されることになる(参考記事「免許更新の認知症診断に医療機関は対応できるか」)。

 この改正で、運転免許に関わる認知症の診断を受ける高齢者は年4000人ほどから5万人に増大すると見られ、認知症専門医でない医師にも診断書の作成依頼が来ることが想定されている。

HDS-RまたはMMSEは必ず実施
 手引きは、(1)かかりつけ医の対応について、(2)平成29年3月施行改正道路交通法について、(3)診断書の記載例、(4)高齢者の自動車等の運転と認知症の人を地域で支えるためのポイント――の30ページで構成。

 まず、「かかりつけの患者」の定義を「少なくとも1年以上定期的に診察を行っており、患者の心身の状態、生活状況を、可能であれば家族からの情報も含め、よく把握できている患者」とした上で、かかりつけの患者の場合とかかりつけの患者でない場合に分けて、診断書作成の依頼があった場合の対応方法についてチャートを作成した。

 かかりつけの患者の場合は、これまでの診療を踏まえて対応し、臨床所見などから認知症と診断できる場合はその旨を記載するよう求めている。診断書作成に当たっては、「画像検査は必須ではないが、認知機能検査(HDS-R[改定長谷川式簡易知能評価スケール]またはMMSE[ミニメンタルステート検査])は必ず実施すること」と明記。「運転免許センターで実施した認知機能検査で『第1分類』と判定されている高齢者で医療機関受診時に実施した認知機能検査(HDS-RまたはMMSE)が20点以下であれば認知症の可能性が高い。緩徐に進行する認知機能障害が確認され、日常生活にも支障が見られ、認知機能検査が20点以下の場合はアルツハイマー型認知症を念頭に総合的に診断する」と解説した。

根拠のない「認知症ではない」診断は「厳に慎むべき」
 診察の結果、認知症と診断する場合には「患者に検査結果が良くないことを伝え、診断書の提出によって、公安委員会の審査で免許証の更新が認められない可能性が高いことを説明する」ことを推奨している。

 患者から免許証の更新を断念する旨の申し出があった場合は「診断書を作成しないで、運転免許証更新の手続きの取り下げを指導するのも一法である」ことを説明。さらに「境界域の患者をMCI(軽度認知障害)と診断することも可能である。この場合、免許証の更新は認められるが、半年後に再検査が求められる」とも補足している。

 一方、認知症が強く疑われるのに、認知機能低下を強固に否認、または「認知症ではない」旨の診断書発行を強く求めるケースについては、「きわめて慎重な対応が求められる。これらのケースにおいては、診断書作成に係る診察、検査を保険診療で行うこと自体が適切でない場合もある」とし、専門医療機関の受診方法について警察の運転免許担当部局に相談するようアドバイスしている。

 なお、手引きには「患者の求めに応じて、医学的根拠なしに、認知症ではない旨の診断書を作成することは厳に慎まなければならない」とも補足している。

「通常、医師の刑事責任が問われることはない」と明記
 手引き中の「(2)平成29年3月施行改正道路交通法について」の項目は警察庁による解説となっており、「公安委員会に提出する診断書を作成する上での留意点」や「改正道路交通法のポイント」などを記載している。

 「公安委員会に提出する診断書を作成する上での留意点」では、「認知症と診断された方の免許の取消し等は、公安委員会の責任で行う」ことを明記。「認知症でないと診断した方が、その後、事故を起こし、認知症であったことが判明した場合であっても、通常、医師の刑事責任が問われることはない」と明記している。また高齢者が免許証を自主返納した場合には、公共交通機関・自治体などによる優遇措置があることなども解説している。

「認知症の疑い」で診察・検査は保険請求可能、診断書作成は請求不可
 この手引きとは別に、日本医師会は各都道府県医師会の担当理事に対して2月17日付けで、「認知症に係る運転免許更新等における診断書提出に関する情報提供について」を送付している。この書面では、検査や診断などに関する費用の取り扱いなどについてまとめており、日本医師会員に対して手引きとともに周知している。

 運転免許証更新時などに認知機能検査で第1分類となった高齢者が受診した場合の費用の取り扱いについて、「厚生労働省に確認したところ、『認知症の疑い』で診察・検査等を実施した場合は保険請求可能であるが、その際であっても診断書の発行に係る費用については、療養の給付と直接関係ないサービスであり、当該費用は保険請求出来ない、との見解であり、厚生局とも当該見解を共有しているとのことである」と説明している。なお、臨時適性検査については、これまでと同様に「公費の対象となる」と記載している。

 手引きのフローチャートに掲載されたポイントなどを次ページ以降に掲載する。

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