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東大が同大調査委員会の最終報告を発表
東大SIGN研究のノバ社員関与、「重大な過失あった」と指摘
別の臨床研究でブリストル・マイヤーズ社の不適切な関与も判明

SIGN研究に関する調査の最終報告を行った齋藤延人氏(東大病院副院長、予備調査委員会委員長)、門脇孝氏(東大病院院長)、松本洋一郎氏(東大理事・副学長、特別調査委員会委員長)、苫米地令氏(東大理事)、名前は左から

 東大は6月24日、同大血液・腫瘍内科が中心となって行った慢性期慢性骨髄性白血病CML)の医師主導臨床研究であるSIGN研究について同大調査委員会の最終報告を発表した。

 同研究にはノバルティスファーマ社員が深く関与し、厚生労働省の「臨床研究に関する倫理指針」や「独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律」に抵触する重大な過失があったとした。

 背景には、研究を実施した医師の臨床研究に関する認識不足や心構えの甘さがあったと指摘。東大病院長の門脇孝氏は、「東大病院全体で臨床研究の倫理教育や利益相反管理に問題があった。再発防止のため万全の体制を構築する」と述べた。

 SIGN研究は、チロシンキナーゼ阻害薬であるイマチニブ(商品名グリベック、製造販売元ノバ社)、ダサチニブスプリセルブリストル・マイヤーズ社)、ニロチニブタシグナ、ノバ社)を服用している慢性期CML患者に対して副作用をアンケート形式で調査し、副作用マネジメントを行っても改善しない場合、ニロチニブに切り替えて副作用症状の改善度合いを観察するというもの。22施設から255例が参加しニロチニブへの切り替え登録は12例で行われた。

 ノバ社員は、研究実施計画書などの書類作成や、アンケート結果の運搬、事務局機能の代行など、広い範囲でSIGN研究に関与していたことが分かっている。これについて調査委員会は、「本来、研究対象の製品を販売する企業とは独立して実施されるべき医師主導臨床研究としては不適正と言わざるを得ない」と指摘した。なお、ノバ社によるデータ改ざんは確認されていない。

 以下、主要な問題点について調査委員会の評価を記すと、ノバ社員はアンケート結果を事務局に運搬したり、コピーを社内に保管するなどしており、患者ID番号がノバ社側に流出した。患者ID番号は電話問い合わせなどで個人を特定できる可能性があり、患者の守秘義務違反に該当する。「独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律」、厚生労働省の「臨床研究に関する倫理指針」などに抵触する重大な過失だとした。

 利益相反の開示については、学内手続きや学会規定に違反はなかったものの、研究代表者である東大血液・腫瘍内科教授の黒川峰夫氏がタシグナ適正使用推進アドバイザーに就いていたことやノバ社からの役務提供があったことは、開示されるべきだったとした。さらに、ノバ社員の関与は利益相反の開示をすればよいという問題ではなく、関与そのものが不適切であると調査委員会は判断した。

 副作用の報告義務違反についても調査委員会は検討。SIGN研究ではグレード3の副作用が2症例で明らかとなった。1例は倦怠感と嘔気、もう1例は筋肉のつりと筋肉痛であり、どちらも薬剤の使用や切り替えで軽減、入院には至っていない。このため重篤な有害事象とは言えず、薬事法で規定した病院から厚生労働省への報告義務に該当する有害事象ではないと判断した。

 SIGN研究自体は、今年4月9日に正式に中止となり、病院長代理と黒川氏、東大血液・腫瘍内科講師の南谷泰仁氏らは患者や参加施設への報告と謝罪を4月までに行ったという。最終報告を受け、関係者の処分は、今後東大の懲戒委員会が決定する。

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