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第三者調査で2次エンドポイントの有意差消失
千葉大のVART、論文撤回を勧告
ノバ社社員の関与疑うも、調査不十分との批判相次ぐ

会見冒頭で頭を下げる千葉大理事の中谷晴昭氏(右)と松元亮治氏(左)。

 千葉大は4月25日、同大循環器内科教授の小室一成氏(当時、現在は東大循環器内科教授)らが行ったバルサルタン(商品名ディオバン)に関する臨床研究VARTで、データの不一致や統計解析方法の誤りが確認されたと発表した。研究に関わった医師の証言から、データがノバルティス ファーマ社の社員に渡り、統計解析に関与した可能性が高いと判断した。千葉大理事の中谷晴昭氏は、「研究の信頼性は低く、科学的価値が乏しい上、利益相反上の問題もあった」と説明。近日中にプロトコール論文、主論文、サブ解析論文の著者に論文取り下げを勧告する。

 VART(Valsartan Amlodipine Randomized Trial)は、高血圧患者の心血管イベントなどに対する効果をバルサルタンとアムロジピンで比較した試験。1次エンドポイントである総死亡、突然死、急性心筋梗塞や狭心症の発症または再発などからなる複合エンドポイントの発生率には有意差がなかったが、2次エンドポイントの左室心筋重量係数(LVMI)や交感神経活性、尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)などは、バルサルタン群で有意に改善した。このため論文では、「バルサルタンはアムロジピンに比べて心腎保護効果に優れる」と結論付けた。論文は2010年に日本高血圧学会のHypertention Research誌電子版に掲載された。

 千葉大は先端医療振興財団臨床研究情報センターに第三者調査を依頼。論文に掲載された図表、論文作成に使用された全登録症例1021人分のデータセット、千葉大病院の患者108人分のカルテデータなどが検証された。

3つの2次エンドポイントの有意差が消失
 調査の結果、論文の患者特性データとデータセットから作成したデータで、BMIや心不全、左室肥大、左室駆出率(EF)、LDL-C、HDL-Cなどの数値が一致しなかった。イベント発生までの人年も論文記載のデータとデータセットで異なり、Kaplan-Meier曲線が一致しなかった。さらに、論文に掲載された図表とデータセット、カルテデータに複数の不一致が認められ、3つの2次エンドポイントの有意差が消失した。

 血漿ノルエピネフリン(NE)とUACRは、論文では36カ月時点で有意差があったと報告された。だが、論文の図とデータセットから作成した図が一致しなかった(図1、2)。統計解析に用いられた検定方法も適切でなく、別の検定方法でデータセットの解析を行ったところ、36カ月時点の有意差は消失した。心縦隔比についても検定方法が適切でないと見なされ、別の検定方法による解析で有意差が消失した。

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