
池下レディースチャイルドクリニックの池下久弥氏。
2014年度診療報酬改定で帝王切開の点数が約2000点引き下げられたことは無効だと確認する調停が申し立てられたことが、4月18日分かった。申立人の池下レディースチャイルドクリニック院長の池下久弥氏は、「点数引き下げは、ただでさえ疲弊している産科医療の現場に追い打ちをかける行為だ」と訴えた。今後、社会保険診療報酬支払基金、東京都国民健康保険団体連合会との間で調停が行われるが、訴訟に進展する可能性もある。
今改定では、緊急帝王切開と選択帝王切開の点数が2020点減の2万140点に、前置胎盤合併や32週未満の早産の場合の帝王切開の点数が2880点減の2万1640点に引き下げられた。
厚生労働省が点数引き下げの根拠としたのは、外科系学会社会保険委員会連合(外保連)がまとめた「外保連試案」だ。外保連試案は、手術の術式ごとの難易度やスタッフ数、所要時間を勘案して算出した人件費と、材料費などのコストを合わせた総費用をまとめたもの。2014年版の作成に当たっては、全国約700の医療機関を調査し、約2000件の帝王切開のデータにより、手術時間の中央値が約60分となった。2012年版では手術時間は約120分で、時間が半分になったことで、人件費も半減された。
「当院は帝王切開が月10件ほどあり、2000点の引き下げで月20万円ほどの減収となる。これまでも採算はぎりぎりだったため、非常に厳しい。医師1人の産科診療所はこれまで、応援医師を要請して帝王切開を行っていたが、採算が合わないため、病院に紹介するケースが増えかねない」と池下氏は話す。