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東北大中里氏、てんかん患者の意識調査を監修
てんかんの正確な診療につながる検査を受けた患者はたった7.0%
患者の症状が改善しないのは医師とのコミュニケーション不足が原因?

「適切な治療を行いさえすれば寛解に導ける患者を確実に治療したい」東北大学大学院てんかん学分野教授の中里信和氏

 グラクソ・スミスクラインは4月2日、てんかん患者に対して行った意識調査の結果を公開した。監修した東北大学大学院てんかん学分野教授の中里信和氏が、同調査結果のポイントを解説するとともに、「てんかんは適切な診断を行い、抗てんかん薬や外科手術など適切な治療を選択すれば大きな効果が得られる疾患だ。しかし、医療体制の不備により、少なくない数の患者が適切な治療を受けられないでいる実態がある」と訴えた。

 対象は、現在定期的にてんかん治療を受けている、20代以上の男女とした。結果を回収できた300例のうち、「(抗てんかん薬の処方数が)2剤未満で、2年以上発作がない」「2剤未満だが、2年以内に発作があった」「2剤以上だが、2年以上発作がない」と回答した、いわゆる軽症例がそれぞれ29.0%、6.3%、46.7%と多くを占める。中里氏は、「対象は社会的に大きな影響のある年齢の患者。こういった患者が、軽症であっても多くの悩みを抱えていることが明らかになった」と調査の意義を語った。

 まず、中里氏がポイントとして挙げたのは、「てんかんであることで、困っていること」についての結果だ。「いつ発作があるか分からず不安」と回答した患者は全体の46.3%、「差別や偏見がある」と回答した患者は全体の28.3%に上った。他にも、「仕事に支障がある」「就学・就職に支障がある」と回答した患者は全体でそれぞれ27.7%、25.0%。さらに、「自動車免許がとれない」と答えた患者は全体では21.3%で、難治例(2剤以上で、2年以内に発作があった例)に絞ると51.9%と半数以上が悩んでいる現状が示された。中里氏は、「発作がほとんどない軽症例でも、悩みが『特にない』と回答した人は3割にとどまっており、7割が悩みを持っているということが分かった」と重視する。

副作用の少ない新規抗てんかん薬の知識を持ってほしい
 抗てんかん薬については、同薬剤を服用している276例のうち、53.6%が「困っていることはない」と回答した。ただし中里氏は、「『困っていることはない』と回答している例の中には、多少の眠気などをカウントせず、発作が起きないから満足、と考えている人もいるのではないか。てんかん治療は発作が起きなければ合格、ではない。医療者は、患者が自動車免許を所持し、会社や学校に通って普通の生活を送れるようになるまでは合格と考えるべきではない」と指摘する。

 一方、困っている症状として挙げられた中で多かったのは、「眠気が強い」「意欲・やる気がなくなる」「身体がだるい」といった症状だった。「このような症状が起きるのは、新薬以外のことが多い。ここ10年くらいで登場した新規抗てんかん薬は、こういった副作用が起きる可能性が大変低くなっているが、医師自身が新規抗てんかん薬に対する知識を十分に持っていないことがある」(中里氏)。

 中里氏が特に強調するのが、不十分な検査の実態だ。「これまでてんかんの診断のために受けた検査はありますか」と聞くと、最も多い回答は「脳波」(92.7%)だった。しかし、てんかんの発作が1年以上抑えられなければ実施が推奨される「長時間ビデオ脳波同時記録」検査を受けたのは全体の7.0%のみ。難治例に限っても、14.8%のみという結果だった。

 てんかんは、病型も様々である上に心因性非てんかん発作など鑑別が難しい症例もあり、診断が難しい症例がある。同検査は、脳波とビデオ撮影の両方で発作の瞬間をとらえることで、てんかんか否かの判定が確定する。てんかんの病型も明らかになる場合が多いため、外科手術の適用や使用すべき薬剤なども判断しやすくなるという。中里氏は、「正確な診断・治療につながるため、特に難治例であればすぐに実施すべき。ただし、診療報酬上の問題もあり、実際に行うことができる施設が少ないことが大きな問題だ」と強調した。

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