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「包括的指示」で実施可能な看護業務は限定的 ─ 厚労省WG
医師と看護師の役割分担めぐる議論が大詰め

2012/12/10
最上 政憲=医療ライター

厚生労働省が12月6日に開催した「チーム医療推進のための看護業務検討ワーキンググループ」の第30回会合。

 医師と看護師の役割分担をめぐる議論が大詰めの段階に入った。厚生労働省は12月6日の会議で、特定の看護師が実施できる医療行為の範囲を狭め、一般の看護師が行える範囲を拡大するとともに、特定の看護師と他職種が競合する医療行為を外す案を示した。病院経営者や関係団体などの声に配慮した修正案だが、看護関係者から「看護師の裁量はどこに反映されるのか」との不満が出た。病院関係者からは「さらに絞り込む必要がある」などの注文が付いた。

 この会議は、「チーム医療推進のための看護業務検討ワーキンググループ」(座長=有賀徹・昭和大医学部救急医学講座教授)の第30回会合で、特定の看護師が実施できる医療行為をさらに絞り込む案を示した(資料は厚労省ホームページ)。前回会合までは、2010年夏に実施した看護業務実態調査で取り上げた203行為を、A(絶対的医行為)、B(特定行為)、C(一般の医行為)などに分類。Aは、医師の具体的な指示があってもできない行為で、Bは医師の「包括的指示」で特定の看護師ができる行為、Cは一般の看護師らも実施できる行為としていた。

 厚労省は今回、B分類の範囲を維持しながら、Bよりもさらに狭い範囲を新たに設定。90以上の行為のうち47行為がそれに該当するとし、この47行為を実施する看護師は、「指定研修を受けなければならない」とした。これにより、「B分類の行為」の一部が「指定研修義務のある行為」となったが、いずれを「特定行為」とするのかは、まだ議論が残っている。今回の会合では、「特定行為」の範囲をめぐって委員からさまざまな注文や不満の声が出たものの、研修義務を課す47行為は大筋で了承された。20日に開催予定の親会議(チーム医療推進会議)に報告する。

指定研修を義務付ける範囲を設定
 看護師の業務拡大をめぐっては、「対医師」「対他職種」との関係に絡む問題であるため、これまで長い議論が続いてきた。09年8月に設置された「チーム医療の推進に関する検討会」が約半年間の検討を重ねて報告書を取りまとめ、それを受けて10年5月に「チーム医療推進会議」が発足。その会議の下にこのワーキンググループが設置されてから約2年半、今回で30回を数える。有賀座長は6日の会議の冒頭、「30回まで来ると、回数を適当に言っても誰も分からないぐらいロングランになった」と笑みをこぼした。救急や外科の現場に携わる立場から、医師の業務負担を看護師が軽減する必要性を訴えてきた。

 現在の議論の主な争点は、医師のみが行うAとBとの関係よりも、B─C間の境界線。特定の看護師のみができる行為を広く規定してしまうと、一般の看護師が行っている行為が制限されてしまうとの声が出ている。また、薬剤師や放射線技師など専門性ある他職種の行為と競合するケースもある。さらに、「B分類の行為」を拡大して看護師を「ミニドクター化」していくことに対しては、療養の世話など「看護本来の専門性」を強調する看護関係者からの抵抗が激しい。こうした議論を踏まえ厚労省は今回、「B分類」の中にさらに狭い領域を設定し、取りまとめを急いでいる。

 現在、「B分類」の範囲を画する基準は「技術的な難易度または判断の難易度」となっている。厚労省は新たに、医師の「包括的指示」の成立要件である「患者の病態の確認を行う」などの「確認行為」を追加し、このような「確認行為」をなし得る看護師は、「指定研修を受けなければならない」とした。これにより、「包括的指示」で実施できる行為の範囲と、指定研修を義務付ける行為の範囲を整合させた。「B─C間」の境界線を維持しながら、特定の看護師ができる範囲を狭めて他職種との摩擦を回避するとともに、一般の看護師も実施できる範囲を拡大し、中小病院の経営者らの要望に応えた。

 具体的には、「看護師が行為を実施する上で、病態の確認行為があるもの」を47行為として、「看護師が行う病態の確認行為があるかなど検討を行う必要があるもの」は外した。さらに、「他職種が行為を実施するものについては、特定行為としない」としたほか、「C分類」に変更した行為や複数の項目を統合した行為も除外した。こうした絞り込みの結果、特定の看護師が実施できる行為として研修が義務付けられる47行為については、医師の「包括的指示」で実施可能とした。しかし、反発もある。

看護師の裁量は?
 「看護師の裁量はどこに反映されるのか? 『病態の確認』は単なるスクリーニングだけではないのか?」。東京医科歯科大大学院教授の井上智子氏が厚労省案にかみついた。厚労省の担当者は、「病態の確認をした上で、あらかじめ定められた『プロトコール』の範囲に合致しているかの確認をする点がポイントだ。この場合には医師の具体的指示を求めないので、看護師の裁量と言える」と答えたが、他の委員から「病態の確認は、看護師がいつもやっている行為ではないか」との声も出た。

 厚労省が示したフロー図では、医師の指示が出されてから特定行為などが行われるまでの流れが詳細に書かれている。大きな議論になったのは、「B分類の行為」のうち、「包括的指示」で特定の看護師のみができる流れと、「具体的指示」で一般の看護師が行う流れとの違い。「包括的指示」で行う流れには、「プロトコールに規定された病態の範囲にあるか」という確認と、「患者の病態がその範囲に合致しているか」の確認という「2つの確認行為」があるが、「具体的指示」の流れにはない。

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