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厚労省提示の論点に「導入ありき」の批判続出
中医協で「費用対効果」の議論がスタート

2012/05/24
最上政憲=医療ライター

5月23日に開かれた中医協・費用対効果評価専門部会の初会合。国立保健医療科学院上席主任研究官の福田敬氏、国際医療福祉大教授の池田俊也氏、阪大教授の田倉智之氏が参考人として出席した。

 医療保険財政が厳しさを増す中、医療技術の価格決定や保険適用などの際に「費用対効果」のルールを導入することの検討が、厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)でスタートした。初会合では、診療側委員からは「命を金に変えるような話。実態は『勘と度胸』になりかねない」、患者代表からは「何に医療の価値を見いだすのか、基本的な理念が重要ではないか」などと批判が相次いだ。厚労省が示したスケジュール案にも「拙速」という指摘がなされ、のっけから議論の長期化をうかがわせる内容となった。

 厚労省が5月23日に初会合を開いたのは、中医協「費用対効果評価専門部会」(資料は厚労省のサイトに掲載)。委員には中医協メンバーがほぼそのままスライドし、部会長には公益委員で日本対がん協会常務理事の関原健夫氏が就任した。

 議論に先立ち厚労省は今後3年間の審議予定を示し、まず「試行的評価のあり方を含めた論点の整理について平成24年秋ごろまでに行う」としたが、制度の基本的な考え方や目的などを先に議論すべきとの声が相次いだ。厚労省が示した検討項目や課題についても、同様の意見が出てまとまらないという状況。厚労省は次回、スケジュールの修正案や基本的な考え方などを改めて示すこととなった。

「総論がない。理念がない」。スケジュールから再考を迫る
 厚労省案に対し真っ先に異を唱えたのは、日本医師会常任理事の鈴木邦彦氏。「平成26年度の次回改定での試行的な導入ありきという前提で話を進めるべきではない」と、ブレーキをかけた。さらに「厚労省の資料は総論なしの各論で、理念なしの技術論。『費用対効果』は命を金に変えるような話にもなりかねない」と批判。「費用対効果分析は医療技術評価とイコールではなく、その一部にすぎない。系統的なレビューができる体制をつくらなければならず、まず土台づくりが必要だ」と訴えた。

 全国医学部長病院長会議相談役の嘉山孝正氏も「医療の根幹にかかわる問題なので拙速は避けてほしい」と要望。希少疾病に用いる医薬品を例に挙げ、「50人しか患者がいない医薬品の開発は費用対効果だけではできない。それを認めるのは人道的な意義があるからだ」と主張。「医療に対して制限がかからないようにお願いしたい」と求めた。他の診療側委員からも同様に「拙速すぎる」などの声が相次いだ。

 スケジュールについて支払側委員や患者代表の発言はなかったが、座長の関原氏は「私と事務局で十分に相談して、もう一度ご提案する」と議論を収めた。

「医療の価値は何なのか」
 今年度中に議論する「当面の論点・課題」についても、意見はまとまらなかった。健康保険組合連合会専務理事の白川修二氏は、「現行制度の何が問題なのか、課題の整理もなく、突然『費用対効果』という話になっている」と指摘。「方針を決める前に課題を整理した上で、改善するためにどういう手法があるかを議論すべきだ。最初のステップが抜けている」と批判した。

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