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感染症学会地方会・化療学会支部総会のワークショップで活発な議論
「抗インフルエンザ薬を使わない」という選択肢はあり得るか?

 10月21~22日に東京で開催された日本感染症学会東日本地方会と日本化学療法学会東日本支部総会の合同学会のワークショップ「抗インフルエンザ薬の適正使用」で、抗インフルエンザ薬を投与しないという選択肢や、今シーズン新たに2つの薬剤が加わった抗インフルエンザ薬の使い分けなどについて議論された。

 抗インフルエンザ薬の投与については、新型インフルエンザの本格流行を前に、日本感染症学会が昨年9月15日、すべての患者に早期からノイラミニダーゼ阻害薬を投与すべきとする診療ガイドラインを発表した(関連記事:2009.9.16「すべての感染者に抗インフルエンザ薬を投与すべき」)。

 その後、今年1月の注射薬ペラミビル(商品名ラピアクタ)の発売を機に、同学会は抗インフルエンザ薬の使用について改めて提言を発表。重症例や入院例に対しては、オセルタミビル(タミフル)、ペラミビルザナミビル(リレンザ)の投与を、外来治療が相当と判断される患者に対しては、基本的にオセルタミビル(タミフル)あるいはザナミビル(リレンザ)の使用を考慮し、服薬コンプライアンスが憂慮される場合や静注治療が適当であると医師が判断した場合はペラミビルの使用を考慮できるとした(関連記事:2010.1.28「日本感染症学会が抗インフルエンザ薬の使用適応で提言」)。

 このように同学会の提言は、患者に対して基本的に抗インフルエンザ薬の投与を考慮する内容となっている。昨シーズン、新型インフルエンザによる国内の死亡率が他国に比べて低かったのは、抗インフルエンザ薬を早期から積極投与したことが奏効したためだと見ている専門家も多く、今シーズンも引き続き、抗インフルエンザ薬を積極投与するという医師は少なくない。

 一方で、新型インフルエンザの病原性が当初想定されていたほど高くなかったことなどから、一部の医師の間では、基礎疾患がなくバイタルも正常な患者などに対しては、抗インフルエンザ薬を投与しなくてもいいのではといった考え方が出てきている。

 また、今月19日、単回吸入のラニナミビル(イナビル)が発売され(関連記事:2010.10.19「第一三共が抗インフル薬・ラニナミビルを発売」)、国内では今シーズン4種類の抗インフルエンザ薬が使えるようになり、薬剤の使い分けについての関心も高まっている。

 ワークショップでは、国立成育医療研究センター感染症科の齋藤昭彦氏、原土井病院臨床研究部の池松秀之氏、防衛医科大学校内科学2の川名明彦氏、富山大学医学部ウイルス学の白木公康氏の4人が講演。質疑応答では、抗インフルエンザ薬を投与しないという選択肢があり得るかどうか、どのように抗インフルエンザ薬を使い分けるかなどについて、それぞれの意見を述べた。

 齋藤氏は、国立成育医療研究センターにおける抗インフルエンザ薬の投与について報告。昨シーズン後半、同センターでは、耐性を誘導する懸念やより病原性の高いインフルエンザ感染症に備えて貴重な医療資源を保持すべきなどの考えから、6歳以上で全身状態が良くバイタルが正常な患者に対しては、発熱があっても抗インフルエンザ薬を投与せず、経過観察するという選択肢を設けた。

 各医師の判断で患者に説明を行ったものの、「患者の親が抗インフルエンザ薬の投与を希望することが多かったため、結果的には、75~85%の患者に抗インフルエンザ薬を投与した」(齋藤氏)。一方、抗インフルエンザ薬を投与しなかった患者には、発熱状況などに応じて、アセトアミノフェン、イブプロフェンを投与したが、それらの患者がその後入院を必要としたり、合併症を併発することはなかったという。今シーズンの抗インフルエンザ薬の使い分けについては、データの豊富なオセルタミビル、ザナミビルを従来通り投与し、点滴薬のペラミビルは重症例で経口投与が難しい症例だけに限定して利用する方向だ。

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