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薬剤溶出ステントとベアメタル・ステントの優劣は?
NEJM誌が異例の特集、5本の論文掲載

 薬剤溶出ステントDES)はベアメタル・ステントBMS)に比べ標的病変部血行再建術TLR)を減らす反面、遅発性ステント血栓症は増えるという懸念はいまだ消えない。この状況を重く見たNEJM誌は、2007年3月8日号に、DESとBMSのアウトカムを比較した5つの論文を掲載した。

 同誌の編集責任者Gregory D. Curfman氏らは、同号のエディトリアルで、今回の特集について「2006年12月7日と8日に、米国食品医薬品局(FDA)循環器デバイス諮問委員会の会合が行われた。そこで報告された、DESのリスクにかかわる様々な発表の内容と、行われた議論について広く知らせるために、これらの論文を掲載した」と説明している。

 冠動脈ステントは、全世界で何百万人もの患者に適用されており、ステント血栓症のような合併症が見付かった場合には、リスクや発症機序に関する研究を進め、迅速に予防法を確立しなければならない。不安払拭までの道のりは短くないが、掲載された論文は、現時点における最善の治療方針の選択を助けるものとなるだろう。

 以下に5つの論文の概要をまとめた。

1)シロリムス溶出ステントとBMSの比較試験
 フランス・パリ第5大学のChristian Spaulding氏らは、シロリムス溶出ステントとBMSを比較した4件の無作為化試験(RAVEL、SIRIUS、E-CIRIUS、C-SIRIUS)の被験者1748人のデータを基に、ARC定義(囲み参照)に基づく分析を実施した。

 ステント留置から4年の時点で、死亡、心筋梗塞、ステント血栓症の発生率に有意差はなかった。有意差が唯一見られたのは遅発性ステント血栓症で、DESの方が有意に少なかった(ハザード比0.18。P=0.03)。サブグループ解析の結果は、糖尿病患者(428人)では、シロリムス群よりBMS群の方が、生存率が高いことを示した(87.8%と95.6%、P=0.008)。

 原題は「A Pooled Analysis of Data Comparing Sirolimus-Eluting Stents with Bare-Metal Stents」

2)シロリムス・ステントとパクリタクセル・ステントの比較
 米Columbia大学のGregg W. Stone氏らは、シロリムス・ステントを用いた試験4件(1748人、RAVEL、SIRIUS、E-CIRIUS、C-SIRIUS)、パクリタクセル・ステントを用いた試験5件(3513人、TAXUS-I、TAXUS-II、TAXUS-IV、TAXUS-V、TAXUS-VI)のプール解析を実施した(個々の研究で設定されたステント血栓症の定義を使用)。

 1年以内のステント血栓症発生率には差はなかったが、1-4年のステント血栓症の罹患率は、BMS群に比べ両DES群で有意に高かった(シロリムス群はP=0.025、パクリタクセル群はP=0.028)。4年間のTLRは、BMS群に比べDES群で有意に少なかった。累積死亡率と心筋梗塞の累積発生率については、DES群とBMS群の間に有意差はなかった。

 原題は「Safety and Efficacy of Sirolimus- and Paclitaxel-Eluting Coronary Stents」

3)BMSとDESの比較
 スウェーデンUppsala大学のBo Lagerqvist氏らは、スウェーデンの血管造影・血管形成レジストリのデータを用いて、冠動脈血管形成術を受けた患者(BMS群1万3738人、DES群6033人)を対象に、ステント留置後3年間の、死亡と心筋梗塞を合わせた複合イベントの発生率を比較した。

 死亡は1424人、心筋梗塞発症は2463人。複合イベントの発生率には有意差なしだったが、ステント留置後6カ月以降は、両群間の差が有意だった。BMS群と比べたDES群の調整済み相対リスクは1.20(95%信頼区間1.05-1.37)。3年間の死亡率はDES群で有意に高く、調整済み相対リスク1.18(1.04-1.35)。6カ月後から3年の間だと1.32(1.11-1.57)となった。臨床的な再狭窄はDES群で60%少なかった(相対リスク減少)が、絶対差は3%を超えなかった。

 原題は「Long-Term Outcomes with Drug-Eluting Stents versus Bare-Metal Stents in Sweden」

4)シロリムス、パクリタクセル、ベアメタルを比較
 米国Brigham and Women's HospitalのLaura Mauri氏らは、ARC定義に基づいて、シロリムス・ステント(878人)、パクリタクセル・ステント(1400人)、BMS(2267人)を比較した無作為化試験で得られた4年間の追跡データをプール解析した。

 個々の臨床試験で設定されていた定義に基づくステント血栓症発生率は、シロリムス群1.2%、BMS群0.6%(P=0.2)、パクリタクセル群1.3%、BMS群0.8%(P=0.24)で有意差なし。ARC定義におけるステント血栓症または高度疑い例は、シロリムス群1.5%、BMS群1.7%(P=0.70)、パクリタクセル群1.8%、BMS群1.4%(P=0.52)で有意差なし。ARC定義を用いると、ステント留置から時間がたつほど、BMS群のステント血栓症発生率は高まり、プロトコール定義との差が開いた。

 原題は「Stent Thrombosis in Randomized Clinical Trials of Drug-Eluting Stents」

5)シロリムス・ステントとBMSの比較
 ドイツMunich工科大学のAdnan Kastrati氏らは、シロリムス・ステントとBMSを比較した無作為化試験14件、4958人のデータをプール解析した。

 同試験の追跡期間は12.1-58.9カ月。主要エンドポイントの全死因死亡に有意差はなかった。死亡または心筋梗塞の頻度にも有意差はなかった。しかし死亡、心筋梗塞、再介入からなる複合イベントは、シロリムス群で有意に少なかった(ハザード比0.43、0.34-0.54)。個々の研究の定義に基づくステント血栓症のリスクには有意差が見られなかったが、1年を過ぎると、シロリムス群でステント血栓症リスクがわずかに上昇した。

 原題は「Analysis of 14 Trials Comparing Sirolimus-Eluting Stents with Bare-Metal Stents」


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