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女性の心血管10年リスク評価ツールを新開発
「Reynoldsリスクスコア」は臨床現場で使えるのか

 米Brigham and Women's病院のPaul M Ridker氏らは、冠動脈10年リスク評価ツールとして「Reynoldsリスクスコア」を開発した。現在、利用されているフラミンガムスコアATP IIIモデルに比べ、今後10年間の女性の心血管疾患リスクをより高精度に予測できるという。このツールの構築、確認過程の詳細は、JAMA誌2007年2月24日号に報告された。

 新たなリスクスコアは、年齢、収縮期血圧、喫煙、総コレステロール、HDL-コレステロール、高感度C反応性蛋白質(hsCRP)、親が60歳未満で心筋梗塞発症、の7つを基本の変数とし、糖尿病患者についてはHbA1cを追加する。このリスクスコアに基づく心血管10年リスクは、「Reynoldsリスクスコア」で計算できる。

 フラミンガム研究に基づく冠危険因子(年齢、高血圧、喫煙、糖尿病、高脂血症など)は、冠動脈リスクの評価に広く用いられてきたが、女性の場合、これら危険因子を利用したリスク予測の精度は男性に比べ低い。近年新たに、アポリポ蛋白質A-1やB-100、リポ蛋白質(a)、C反応性蛋白質などのマーカーが発見されたことから、著者らは、従来から知られている危険因子と新たな危険因子を利用して女性の心血管リスクを評価する、新アルゴリズムを開発しようと考えた。

 分析対象はWomen’s Health Study(WHS)の被験者から選んだ。これは、米国で45歳以上の心血管疾患ではない女性2万4558人を対象に、1992年9月から2004年3月まで(追跡期間は最短で8年、中央値は10.2年)行われた研究で、心血管イベント(心筋梗塞、脳梗塞、冠動脈再建術、心血管死)の発生が評価された。

 ベースラインで、血液を採取。総コレステロール、HDL-コレステロール、LDL-コレステロール、リポ蛋白質(a)、アポリポ蛋白質A-1、アポリポ蛋白質B-100、hsCRP、可溶性ICAM-1、フィブリノーゲン、クレアチニン、ヘモグロビンA1c、血漿ホモシステインのレベルを測定。
 
 そして研究者たちは、無作為に選んだ3分の2の被験者(誘導コホート、1万6400人)のデータを使用し、新たなリスク評価アルゴリズムを開発した。その後、残りの3分の1(確認コホート、8158人)を対象に、新モデルの有用性を評価した。

 モデルA(ベストフィット・モデル)の構築過程は以下の通り。

入手可能なすべての変数とすべての血漿バイオマーカー(変数は計35)について、それらの変化や相互作用も考慮し、最初のモデルを作成。

段階的選別法と、多変量加法回帰ツリーを用いて、変数を選択、交互作用を評価し、ベイズ情報量規準(BIC)スコア(モデル選択のための指標で、値が低いモデルほどよりフィットすることを意味する)が最低になるよう9変数(年齢、収縮期圧、喫煙、アポリポ蛋白質B-100、hsCRP、アポリポ蛋白質A-1、親が60歳未満で心筋梗塞発症、糖尿病患者についてはヘモグロビンA1c、アポリポ蛋白質B-100が100mg/dL以上ならアポリポ蛋白質(a))を選抜、これらからなるモデルを構築。

次に、実際の臨床応用を目的として、よりシンプルなモデルB(Reynoldsリスクスコア)を作製。変数の相関などを考慮した上で、年齢、収縮期圧、喫煙、総コレステロール、HDL-c、hsCRP、親が60歳未満で心筋梗塞発症、糖尿病患者についてはヘモグロビンA1cを変数として選んだ。

直接比較するために、モデルAとモデルB、ATP-IIIリスク評価アルゴリズム(変数は、年齢、性別、総コレステロール、HDL-コレステロール、収縮期圧、高血圧治療の有無、喫煙)、フラミンガムリスクスコア(変数は、年齢、総コレステロール、HDL-コレステロール、血圧、糖尿病の有無、喫煙)のベイズ情報量規準(BIC)スコアを算出。モデルAが9039.4、モデルBが9067.5、ATP IIIモデルは9098.5、フラミンガムモデルが9161.2で、新モデルのリスク予測能力は、既存のモデルを超えることが示された。

さらに、エントロピー法、Yatesスロープ、Brierスコアを用いて予測モデルを評価。予測の精度は、ROC曲線下面積を指標に判別分析(値が大きいほど判別は良好)により確認。モデルの較正(予測能力が実際のリスクをどれだけ正確に反映するか)には、Hosmer-Lemeshow検定を用いた。これら評価の結果はすべて、既存のモデルに比べ、モデルA、モデルBの予測能力の方が高いことを示した。

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