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妊婦はどれだけ魚介類を摂取すべきか
週340g超でも害はなく、低摂取は発達を妨げる

 妊婦魚介類をどれだけ摂取すべきなのか。米国では妊娠中の女性の魚介類摂取量を週340gに制限すべきと勧告されているが、この米国の勧告に従って摂取量を減らすと、出生後の子どもの発達が最適にならない可能性が示された。詳細は、Lancet誌2007年2月17日号に報告された。

 胎児の適切な神経発達に必要な栄養素であるDHAEPAオメガ-3必須脂肪酸などの主な供給源は魚介類だ。しかし魚介類の摂取により、そこに含まれるメチル水銀などの神経毒に胎児が曝露する危険性もある。2004年に米国食品医薬品局(FDA)と米国環境保護局(EPA)が、妊娠中の女性の魚介類摂取量を週340gに制限すべきと勧告しているが、果たして週340gで適切な神経発達に必要な量のオメガ-3脂肪酸が摂取できるのか。

 米国立衛生研究所(NIH)のJoseph R Hibbeln氏らは、英国のAvon Longitudinal Study of Parents and Children(ALSPAC)の対象となったコホートを対象に観察研究を行い、妊婦の魚介類摂取量が子供の発達に及ぼす影響を調べた。

 ALSPACは、妊娠中と産後の環境因子が、子供の発達、健康、幸福にどのような影響を与えるかを評価する目的で設計された。英国Bristol市とその周辺に住んでいた、出産予定日が1991年4月1日から1992年12月31日の全妊婦が登録対象となった。1万4541人の妊婦から生まれた子どもで、少なくとも12カ月間生存していたのは1万3988人。妊娠中と産後に複数回、郵送による調査を妊婦に依頼し、年齢、人種、学歴や社会経済的状況、出産児数、母乳か人工乳か、喫煙、飲酒習慣などを調べた。魚介類摂取量は、妊娠32週の時点で行った食物摂取頻度調査に回答した1万1875人の妊婦について推算した。摂取量は週に0gから3568g(平均は235g)で、オメガ-3摂取量は0gから15.6g(平均1.06g)と推算された。

 子供の認知能力は、Weschler小児知能スケールIII(WISC-III知能検査)を用いて8歳時に評価(5449人)。行動能力の評価には、行動チェックリスト、Strengths and Difficulties Questionnaireを適用。向社会的行動、過活動、情動症状、問題行動、対人問題という5つの下位尺度と総困難度を調べた。発達の評価にはDenver式発達スクリーニング・テストを使用。6、18、30、42カ月時に社会的発達、微細運動、言語(コミュニケーション)、粗大運動の4分野について評価した。

 まず、母親が妊娠中に魚介類を全く食べなかった子供群(1059人、12%)と、摂取量が週に340g以下だったグループ(5770人、65%)、340g超のグループ(2087人、23%)の間で、これら発達指標のスコアが最低四分位群に属する子供の割合を比較。ここに属する子供を最適には至らない発達(最適未満)とした。社会的経済的要因や食事内容などに関わる28の交絡因子候補で調整し多変量ロジスティック回帰分析を実施した(交絡因子のデータが揃っていたのは8946人)。調整後、魚介類摂取量の増加と最適未満リスク減少の傾向検定により、以下のような有意性が示された。

・言語性知能指数(VIQ)--妊婦の魚介類摂取量が340g超群に比べ、340g以下群では、子どものVIQが最低四分位群に属するリスクが高かった。8歳時に、340g超と比較した場合の摂取なし群のオッズ比は1.48、340g以下群のオッズ比は1.09、傾向のP値は0.004。
・全検査IQ --VIQと同様に、8歳時のそれぞれのオッズ比は1.29と1.19、傾向のP値は0.0389。
・向社会的行動 --7歳時に、340g超と比較した場合の摂取なし群のオッズ比は1.44、340g以下群のオッズ比は1.16、傾向のP値=0.0249。
・微細運動--18カ月時のオッズ比はそれぞれ1.25と1.09、P=0.0222、42カ月時のオッズ比は1.35と1.14、P=0.0053。
・社会的発達--30カ月時のオッズ比は1.24と1.12、P=0.0326、42カ月時は1.21と1.17、P=0.0377。
・言語(コミュニケーション)--18カ月時のオッズ比は1.26と1.02、P=0.0485。

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