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【連載第4回:米国医療はハリケーンにどう対応したか】
トリアージと公衆衛生のはざま

2005/11/26
永田高志

 大規模な災害では大量の外傷患者が発生し、緊急医療チームが次々に緊急手術を実施する――こんな印象を抱いている方は医師でも非常に多いようだ。しかし過去の自然災害の事例を振り返ると、災害の急性期の緊急医療援助でさえ、求められるのはほとんどが日常的医療である。今回のハリケーンカトリーナにおいても例外ではなかった。

 今回、現場に派遣された医師の証言もこの「法則」を裏付ける。10月14日、ハーバード大学医学部の関連病院マサチューセッツ総合病院救急部スタッフでプレホスピタル・災害対策の専門家、ポール・ビディンガー医師に話を聞くことができた。

 ビディンガー医師は、民間医師が米国海軍の大型病院船に乗り込んで医療活動を行うボランティア活動「Project Hope」に参加した。この病院船は病床数が1000床、手術室が12、ICUが80床、そして1日あたり300件のあらゆる手術が可能な大規模野戦病院としての機能を持つ 1)。

 ハリケーンが直撃したミシシッピー州に、被災2週間後に赴いたProject Hopeを待っていたのは、病院船で緊急手術を必要とする外傷患者ではなく、糖尿病と高血圧のコントロール、常用薬の定期処方、足の傷の治療などを必要とする患者の列であった。病院船で緊急手術を行うために召集された外科系医師は、ビディンガー医師も含めてこの状況に大いに戸惑ったと、率直に語ってくれた。


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