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nature medicine誌から
遺伝子治療で網膜色素変性症患者の視覚を改善
オプトジェネティクスと光刺激ゴーグルにより目前の物体を認識可能に

 オプトジェネティクスに基づいて、網膜ガングリオン細胞にチャネルロドプシン蛋白質を発現させ、ゴーグルが捉えた目の前の風景を光刺激により網膜色素変性症患者の網膜に投影したところ、失明状態の患者が、テーブルの上にある物体の位置を認識し、数を数えて、手で触れることができるようになった。フランスInstitut de la VisionのJose-Alain Sahel氏らは、オープンラベルのフェーズ1/2a試験PIONEERに参加し、最初に評価された患者のデータをnature medicine誌電子版に2021年5月24日に報告した。

 オプトジェネティクスとは、哺乳類の神経細胞に光応答性のチャネルを発現させて、光を照射したときのみチャネルが開き、神経活動が起こるようにする、遺伝子操作と光学的手法を組み合わせた方法で、当初は神経細胞の機能の探索に用いられていた。

 著者らは、オプトジェネティクスが、神経変性疾患患者に神経回路特異的な回復をもたらす可能性があると考えた。網膜色素変性症は、遺伝性の眼の神経変性疾患で、光受容体の喪失が生じて視覚を失う病気で、患者は最終的に完全に失明する。原因となる遺伝子は、これまでに71個以上同定されている。

 オープンラベルの多施設フェーズ1/2a試験PIONEERは、進行した網膜色素変性症患者を対象に、オプトジェネティクスと光刺激ゴーグルを利用した視覚回復技術の安全性と有効性の評価を目的として行われている。12~18名の被験者が登録される予定で、主要評価項目は、1年後の安全性と忍容性に設定されている。最大耐用量と判断された用量が適用された患者は、長期追跡されることになっている

 PIONEER試験に登録された患者は、以下のような治療を受けている。単細胞藻類Chlamydomonas noctigama由来の光感受性チャネルロドプシン蛋白質であるChrimsonRをコードする遺伝子と、赤色蛍光蛋白質tdTomatoの遺伝子を融合したものをアデノ随伴ウイルスベクターに組み入れて、個々の患者の、症状がより深刻な方の眼の硝子体内に単回注射する。tdTomato遺伝子はChrimsonRの細胞表面への発現を高めるために用いられている。ChrimsonR-tdTomato蛋白質の活性がピークとなる波長はおおよそ590nmだ。

 光刺激ゴーグルは、人間の視覚のメカニズムを再現するニューロモーフィックカメラを用いて、患者の視野に入る物体を、ピクセルごとの強度の変化として検出し、モノクロームのイメージに変換して、リアルタイムで患者の網膜に595nmの光パルスとして投影する機能を持つ。これにより、導入遺伝子を発現している網膜ガングリオン細胞を活性化する。

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