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Circulation誌から
インフル予防接種で心不全患者の死亡リスク低減
デンマークの13万人規模の大規模コホート研究から

2019/02/15
佐古 絵理=メディカルライター

 インフルエンザ予防接種により、心不全患者の総死亡や心血管死が減少するのかを調べるため、デンマークで13万人規模の大規模コホート研究を行ったところ、接種により転帰が改善する可能性が示唆された。結果はCirculation誌1月29日号に掲載された。

 対象は2003年1月1日から2015年6月1日までの間に、新規に診断された心不全患者。デンマーク全国患者レジストリを用いて特定した。心不全と診断されてから30日以内に死亡した患者および18歳未満の患者は除外した。

 主要評価項目は、デンマーク全国死因レジストリの情報に基づく、総死亡および心血管死とした。インフルエンザ予防接種に関する情報をデンマーク全国開業医償還レジストリから収集し、追跡期間中のワクチンの接種状況(無接種または1回以上の接種)、累積接種回数、接種頻度を時間依存性の共変量として、多変量Cox回帰モデルを構築した。

 解析対象は13万4048人であり、そのうち追跡期間中にインフルエンザ予防接種を1回も受けなかった心不全患者は5万5669人(42%)だった。総死亡の追跡調査の中央値は3.7年(四分位範囲:1.7~6.8年)であり、追跡率は99.8%。予防接種の98%は9月から12月に接種されていた。予防接種率は年によって異なり、2003年は16%、2015年は52%で、2009年の接種率が最も高かった(54%)。

 患者背景を見ると、追跡期間中にインフルエンザ予防接種を1回以上受けた患者は、受けなかった患者よりもやや年齢が高く、男性が多く、心不全との診断前にもインフルエンザ予防接種を受けていた割合が高かった(いずれもP<0.001)。また、多くの併存疾患で有病率がより高く、薬剤の使用率も顕著に高かった。

 追跡期間中の総死亡は7万7956人(58%)に発生し、心血管死に至った患者は4万7966人(36%)だった。

 未補正の解析では、追跡期間中に1回以上インフルエンザ予防接種を受けた患者の、非接種者に対するハザード比(HR)と95%信頼区間(95%CI)は、総死亡が1.28(1.26-1.30)、心血管死が1.26(1.23-1.28)であり(いずれもP<0.001)、死亡リスクはいずれも高かった。

 ところが年齢、性別、世帯収入、教育水準、併存疾患、使用薬剤で補正した解析では、インフルエンザ予防接種を実施した患者のHR(95%CI)は、総死亡が0.82(0.81–0.84)、心血管死が0.82(0.81–0.84)となり(いずれもP<0.001)、予防接種に伴い死亡リスクが18%低下していた。

 インフルエンザの累積予防接種回数別にみると、総死亡のHR(95%CI)は累積接種回数が1回の場合は0.82(0.81-0.84)、4回以上の場合は0.72(0.70-0.73)であり、累積接種回数が多いほどリスクが低かった(傾向のP<0.001)。また、心不全との診断後に毎年予防接種を受けていた人は、非接種者と比べて総死亡のリスクが19%低下していた(P<0.001)。心血管死についても同様の傾向がみられた。

 9月から10月に予防接種を受けた患者の総死亡リスクは、11月から12月に受けた患者と比べて低かった。例えば総死亡のHR(95%CI)は、9月に接種した場合に0.78(0.76-0.80)だったのに対し、12月接種では0.90(0.84-0.95)だった。心血管死のリスクも接種時期が早期であるほど大きく低下していた。

 著者らは多変量補正の前後で解析結果が負から正に転じた理由について、おそらくより病的かつ高齢で併存疾患が多い患者ほど予防接種率が高い傾向があるため、未補正解析では選択バイアスによる交絡を受けていたことが示唆されると述べている。

 また、インフルエンザに感染すると心不全症状が悪化して心不全が進行するおそれがあり、インフルエンザ感染が複数回予防されれば、心不全の進行も複数回にわたり回避される可能性があると指摘。このことが、予防接種回数が多いほど死亡率が大きく低下していたことの一因となっているのかもしれない、と考察している。

 一部の著者は複数企業から研究助成金を得ているが、資金提供者はいずれも研究デザイン、データの収集・解析・解釈、論文の執筆に関与していない。

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