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Eur Heart J誌から
心房細動の予後予測に新たなスコアが登場
CHA2DS2-VAScスコアを超える予測性能

2016/06/06
難波寛子=医師

 心房細動AF)患者の脳卒中リスク予測に、新規スコアリングシステムであるABCスコアが提案された。ABCスコアでは、既往歴に加えて高感度心筋トロポニンおよびヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT-proBNP)を用いて予後予測を行うもので、その予測性能を示すc-indexはCHA2DS2-VAScスコアよりも高いことが確認された。論文はEur Heart J誌5月21日号に掲載された。

 本研究では予測モデルの構築にあたり、ARISTOTLE(Apixaban for Reduction in Stroke and Other Thromboembolic Events in Atrial Fibrillation)研究とSTABILITY(STabilization of Atherosclerotic plaque By Initiation of daraLadIb TherapY)研究のデータを用いた。

 内的妥当性(因果関係の妥当性)は、ARISTOTLE研究の参加者のうちランダム化時点の検体でバイオマーカーの測定が可能だった1万4701人を対象に検討した。また、外的妥当性(一般化の可能性)は、STABILITY研究の参加者のうち組み入れ時バイオマーカーの測定値が明らかだったAF患者1400人を対象に検討した。

 ARISTOTLE研究の対象は、臨床的な脳卒中リスクを有する心房細動または心房粗動(発作性、持続性、永続性)患者。STABILITY研究の対象は、心血管リスク因子を有する安定冠動脈疾患患者。

 第一段階として、AF患者の脳卒中リスク候補として挙がった予後予測因子全てを含むCox比例ハザードモデル(フルモデル)を作成した。含まれる危険因子は、年齢、性別、喫煙者、持続性または永続性AF、心不全、高血圧、糖尿病、脳卒中/TIAの既往、血管疾患、心筋梗塞の既往、末梢動脈疾患、高感度心筋トロポニンI(cTnI-hs)、高感度心筋トロポニンT(cTnT-hs)、NT-proBNP、eGFRだった。

 このモデルを簡便化して臨床的に使用可能とするために、backword アルゴリズムを用いて最小二乗法による近似を試みた。その結果、年齢、cTnI-hs(またはcTnT-hs)、NT-proBNP、脳卒中/TIAの既往の4項目だけで、フルモデルの96.5%近似となった。

 そこで、この4項目に絞った場合のスコアを想定し、内的妥当性を検討した。

 対象は、ARISTOTLE研究で組み入れ時の血清サンプルが得られた1万4701人。対象の年齢の中央値は70歳(範囲:19-97歳)で、35.7%が女性だった。CHA2DS2-VAScスコアに含まれるリスク因子の頻度は、高い順に高血圧(87.5%)、65歳超(69.9%)、女性(35.7%)、心不全(31.0%)、糖尿病(24.7%)、脳卒中/TIA既往(18.8%)、血管疾患(24.8%)だった。

 追跡期間1.9年において、cTnI-hsは検出可能だった93.6%のうち9.2%で上昇が見られた。cTnT-hsは93.5%で検出可能で、34.4%で上昇。NT-proBNPは75%で上昇していた。

 新スコアの作成は、2万7929人年の観察に基づいて行った。観察期間中に、391回の脳卒中または全身性塞栓症が発生した。危険因子の探索の結果、最も重要と考えられたのは、脳卒中/TIA既往、NT-proBNT、cTnI-hs(またはcTnT-hs)、および年齢だった。その他の臨床的危険因子やバイオマーカーはスコアの能力に有意差をもたらさなかった。

 この結果に基づいて新たなスコアを考案。新スコアの算出に、年齢(Age)、バイオマーカ―(Biomarkers:cTnI-hs、NT-proBNP)、既往歴(Clinical histry:脳卒中/TIAの既往)を用いることから、ABCスコアと命名した(図1参照)。

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