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J Am Coll Cardiol誌から
早朝家庭血圧はイベント予測に有用
家庭血圧の予測能は診療所血圧を凌ぐ可能性

2016/04/25
山川 里香=医学記者

 早朝家庭収縮期血圧は将来の冠動脈疾患CAD)および脳卒中の強力な予測因子であり、診療室収縮期血圧を凌ぐ可能性がある――。こうした新たな知見が、既存のHONEST研究のデータを利用した解析によって見出された。今後、無作為化比較試験を行って、早朝の降圧に特化した治療によりCADおよび脳卒中が減少するのか判定する必要がある。自治医科大学の苅尾七臣氏らによって明らかにされたもので、結果はJ Am Coll Cardiol誌4月5日号に掲載された。

 診療室血圧は脳卒中イベントの有力な予測因子だが、CADイベントを予測できない可能性がある。そこで著者らは、臨床現場で実施された最大規模のプロスペクティブ研究であるHONEST研究のデータを利用して、早朝家庭血圧とCAD/脳卒中イベント発生率の関連性を調査した。

 適格患者は、本態性高血圧と診断されているがオルメサルタンを服用しておらず、有効性の立証された上腕式血圧計を有しており、オルメサルタン服用開始前の28日間に早朝家庭血圧を2回測定し、2009年10月1日~2010年9月30日の登録期間後にオルメサルタンを処方されていた。

 家庭血圧は追跡期間の1週目、4週目、16週目、6カ月目、12カ月目、18カ月目、24カ月目に、診療所血圧は4週目、16週目、6カ月目、12カ月目、18カ月目および24カ月目に測定した。脳卒中/CADイベントを発症した患者については、初回発症時までに収集した診療所血圧測定値の平均を使用した。

 Cox比例ハザードモデルを用いて、治療中の家庭血圧/診療室血圧と脳卒中/CAD発生率の関連性を調査した。また、家庭血圧または診療室血圧を追加することで脳卒中/CADイベントモデルの適合度が向上するのかも尤度比検定で評価した。

 最終的に2万1591例のデータを解析に使用した。追跡期間は平均2.02±0.50年、中央値は2.08年(最長値は3.4年)だった。患者2万1591例のうち1万921例(51%)が女性、平均年齢は64.9±11.9歳だった。追跡期間中に452例が途中離脱し、190例が死亡した。連絡不能となった1950例(9.0%)の追跡期間は21カ月未満だった。

 脳卒中イベントについてみると、早朝家庭収縮期血圧が125mmHg未満の患者(1000人・年当たり1.79例)に比べて、145~155mmHg未満(3.97例、HR: 1.90、95%信頼区間[95%CI]:0.90-3.99、P=0.091)、155mmHg以上(12.57例、HR:6.01、95%CI:2.85-12.68、P<0.001)の患者の発生リスクが有意に高かった。また、診療室収縮期血圧が130mmHg未満の患者(1000人・年当たり2.38例)に比べて、150~160mmHg(4.88例、HR: 2.00、95%CI: 1.06-3.76、P<0.05)、160mmHg以上(14.17例、HR: 5.82、95%CI: 3.17-10.67、P<0.001)の患者の方が有意に高かった。

 CADイベントについてみると、早朝家庭収縮期血圧が125mmHg未満の患者(1000人・年当たり1.46例)より、145~155mmHgの患者(4.15例、HR: 2.15、95%CI: 0.98-4.71、P=0.056)や155mmHg以上の患者(12.61例、HR: 6.24、95%CI: 2.82-13.84、P<0.001)の方が有意に高かった。一方、診療室収縮期血圧が130mmHg未満の患者(2.38例)よりリスクが有意に高かったのは160mmHg以上の患者(8.82例、HR: 3.51、95%CI: 1.71-7.20、P<0.001)のみだった。

 夕方の家庭収縮期血圧については、155mmHg超の患者ではCADイベントの発生率およびHR(1000人・年当たり18.68例、HR:7.74)が有意に上昇していた。しかし、145~155mmHgの患者(5.10例、HR2.13)に有意上昇は認められなかった。これらの結果から、早朝家庭収縮期血圧と比べて、診療室収縮期血圧および夕方家庭収縮期血圧の方がCADリスクを過小評価する可能性があることが分かった。

 また、著者らはJカーブ現象を検証するため、早朝家庭収縮期血圧125mmHg未満の区分を115mmHg未満と115~125mmHgの2区分に細分化したり、スプライン回帰解析を行ったりしたが、Jカーブ現象はみられなかった。

 診療室収縮期血圧モデルに早朝家庭収縮期血圧を追加すると適合度は有意に向上した(脳卒中;P<0.001、CAD;P<0.001)。しかし、早朝家庭収縮期血圧モデルに診療所収縮期血圧を追加すると脳卒中モデルの適合度は有意に向上したが、向上の度合いは低く(P<0.05)、CADモデルの改善は有意に至らなかった(P=0.434)。

 今回の研究では、早朝家庭血圧を測定期間当たり4回測定(1日2回、2日)したが、診療所血圧の測定は1回のみだった。したがって、早朝家庭血圧の優位性は複数回測定することによってもたらされる可能性があるが、家庭血圧の利点は簡単に何回も測定できる点にある、と著者らは説明している。

 今回の研究には、個々の医師の裁量で血圧目標値を決定した、併用療法を制限しなかった、対照群を設定しなかったなどの限界がある、と著者らは指摘している。

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