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J Am Coll Cardiol誌から
心臓病専門医の報酬に明らかな男女差
診療内容の差だけでは説明つかず

2016/02/19
佐古 絵理=メディカルライター

 心臓病専門医報酬には診療内容の差だけでは説明のつかない男女差があることが、米国で行われた研究で明らかとなった。結果はJ Am Coll Cardiol誌2月9日号に掲載された。

 米国心臓病学会(ACC)による1996年と2006年の調査で、心臓病専門医の女性は男性と比べ、既婚者や子どもを持っている人、インターベンションを実施している人、昇進している人や同僚より高い報酬をもらっている人、自らの報酬に満足している人が少ないことが示唆されていた。しかし、診療内容や実際の報酬金額に関する情報は収集されていなかった。そのため著者らは、これらの情報を新たに収集して男女差の特性を広く調べ、報酬の差がこれらの特性の差によって説明できるか調べた。

 心臓病専門医のデータは、心臓病専門の開業医や医師、学術施設の会員制ネットワークおよびサービスプロバイダであるMedAxiomから収集した。

 各医師の個人特性、職業特性、診療所特性を解析した。個人特性は、年齢、人種、心臓病の専門分野などとした。職業特性は、常勤の有無、半日勤務の日数、呼び出し対応の有無、RVU(relative value unit、Medicareの診療報酬を計算する際に使われる、医師の業務を評価する単位)、具体的な診療行為(心カテーテルや心エコーなどの)などだった。診療所特性は、診療地域、診療構成(心臓病の他に心臓胸部外科や心臓血管外科も実施しているかなど)、女性理事長の有無、診療規模などだった。最後に各医師の報酬データを収集した。

 多変量回帰モデルにより、性別と報酬の関連を評価した。交絡因子として上記特性を含む補正モデルも構築して評価した。また、報酬の評価に好んで使用される統計法である、Peters-Belson法による解析も実施した。

 解析対象の心臓病専門医は2679人であり、女性は229人、男性は2450人だった。女性は男性より若い傾向があった(49歳未満の医師の割合は、女性:56%、男性:38.8%)。また、一般心臓専門医が多く、インターベンション専門医は少なかった。

 職業特性のうち、常勤者の割合(女性:79.9%、男性:90.9%、P<0.001)、半日勤務の平均日数(女性:387日、男性:406日、P=0.001)、RVU(女性:7404、男性:9497、P<0.001)に男女差が見られた。また、呼び出しに対応していない女性は男性より多かったが(女性:17.5%、男性:7.2%)、呼び出しに完全対応している女性は男性より少なかった(女性:67.5%、男性:83.9%)。大半の診療所特性には大きな男女差が見られなかった。

 報酬は男性の方が高く、平均金額は女性が40万0162±19万2124ドル(中央値:39万4586ドル、四分位範囲:25万6064ドルから51万8277ドル)、男性が51万0996±21万6337ドル(中央値50万2251ドル、四分位範囲:38万1417ドルから62万1306ル)だった。

 さまざまな補正モデルで報酬に男女差があることが示された。個人、職業、診療所、生産性に関する40種類を超える特性で補正した多変量解析モデルでも、性別と給与との間に独立した関連性が確認された(R2=0.59、P=0.001)。

 Peters-Belson解析から、生産性などの特性を根拠とした場合、今回の解析対象となった女性医師は、もし男性であれば実際の給与より3万1749ドル(95%信頼区間:1万6303ドルから4万8028ドル)高い平均給与を受け取っていると推測された。

 今回の研究では、厳格に生産性のみに基づく報酬モデル、または医師全員に均等に配分される報酬モデルであるとした医師の割合が約25%と少なかった。著者らは、これらの報酬モデルでは男女差はほとんど生じないと考えられるが、他の多くの報酬モデルには他にも報酬を左右する要素があり、報酬に非客観的な変動をもたらしている可能性があると指摘している。

 最後に著者らは、診療所レベルでの給与体系の透明性や一貫性の向上に努めるなど、支払の公平性を確保する努力を促すべきだと述べている。

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