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Arch Intern Med誌から
末期腎不全患者へのインフルワクチンの有効性に疑問符
インフルエンザ様疾患や全死亡の予防効果はほとんど見られず

 末期腎不全ESRD;end-stage renal disease)患者に対するインフルエンザワクチン接種に、インフルエンザ様疾患の罹患、インフルエンザまたは肺炎による入院、全死因死亡を予防する効果はほとんどない―。そんな研究結果を、米North Carolina大学Chapel Hill校のLeah J. McGrath氏らが、Arch Intern Med誌2012年4月9日号に報告した。

 ESRD患者がインフルエンザに罹患した場合の合併症と死亡のリスクは、一般の人々より高いと考えられており、ワクチン接種が推奨されている。米国では過去20年間にわたって、多くの透析施設で季節性インフルエンザに対する予防接種が行われてきた。血液透析を受けている患者は、健康な成人に比べてインフルエンザワクチンへの反応性は低いものの、ワクチンの免疫原性を調べた複数の研究では、透析患者の50~93%でワクチン接種により抗体価上昇が得られると報告されている。

 しかし、ワクチンが実際にESRD患者のインフルエンザによる死亡と合併症をどの程度予防できるのかは明らかではなかった。その理由の一つが、ワクチンの効果(vaccine effectiveness;現実社会で集団に見られるワクチンの効果)の推定が、観察研究では難しい点にある。予防接種を受ける患者は受けない患者より健康状態が良好である可能性など、認識されていない様々なバイアスの存在が予想されるからだ。

 それらのバイアスを極力排除するために、著者らは、ワクチン株と流行株の型がよく一致した年を「一致年」、一致しなかった年を「非一致年」として、それらの間でワクチンのeffectivenessを比較するnatural experimentを行うことにした。ワクチンが有効ならば、型がよく一致した年にはeffectivenessは高く、一致しなかった年は低いはずだ。

 著者らは、型が一致しなかった97~98年を非一致年に、よく一致した98~99年、99~2000年、01~02年を一致年に選んだ。米国内の全てのESRD患者の情報を収集している US Renal Data Systemに登録されたメディケア受給者のうち、血液透析を継続的に受けている人々について、一致年、非一致年のインフルエンザワクチン接種の有無と、インフルエンザ様疾患、インフルエンザまたは肺炎による入院、全死因死亡の有無を調べた。得られたデータを用いて、まず各年のワクチン接種群の転帰と非接種群の転帰を比較し、ハザード比を求めた。次に、一致年のハザード比を非一致年のハザード比で割って、ハザード比の比(RHR;ratio of hazard ratio)を求めた。

 全ての分析において、年齢、人種、性別、ESRDの原因、ESRD歴、透析治療の遵守、身体機能(移動補助具の必要性に基づく)、酸素の使用、在院日数、各地のESRD Networkへの登録、合併疾患で調整した。

 どの流行期も、10万人を超えるESRD患者が組み入れ条件を満たし、ワクチン接種者は非接種者より少なく、接種率は約48%だった。

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