閉経女性のスタチン使用者の糖尿病罹患リスクは非使用者に比べて有意に高いことが、前向き観察研究Women’s Health Initiative(WHI)に参加した女性のデータの分析で明らかになった。米Mayo ClinicのAnnie L. Culver氏らが、Arch Intern Med誌電子版に2012年1月9日に報告した。
効果が確実でリスクは少ないと考えられているスタチンは、高齢者を中心に広く投与されている。しかし近年、スタチンが糖尿病リスクを高める可能性が示されており、特に、高齢者、女性、東洋人ではリスク上昇が大きいことが示唆されている。そこで著者らは、閉経女性のスタチンの使用者で新規発症糖尿病のリスクは上昇するのか、リスク上昇がある場合はスタチンの種類によってそのレベルは異なるのかを評価し、さらにリスク上昇に関係する患者特性も明らかにしようと考えた。
WHIは、1993年から98年まで、米国内の40医療機関で50~79歳の閉経女性16万1808人を登録した大規模観察研究だ。著者らは、ベースラインで収集された人口統計学的要因(人種、年齢、学歴など)と医療歴(糖尿病家族歴、うつ病家族歴、自己申告による心血管疾患、ホルモン療法歴、喫煙歴など)に関する情報、身体計測と血液検査のデータを得た。
今回の研究では、05年までの追跡データを分析した。スタチンの使用は登録時と3年目に調査し、患者の自己申告に基づく糖尿病診断の有無については半年または1年ごとに聞き取りを行った。
ベースラインのデータがそろっており、糖尿病ではなかった15万3840人(平均年齢63.2歳)を分析対象にした。このうち7.04%(1万834人)がスタチンを使用していた。処方されていたのはシンバスタチン(スタチン使用者の30.29%)、ロバスタチン(27.29%)、プラバスタチン(22.52%)、フルバスタチン(12.15%)、アトルバスタチン(7.74%)だった。
100万4466人-年の追跡で、1万242人の患者が糖尿病を発症していた。ベースラインでのスタチン使用は糖尿病リスクを有意に高めていた。Cox比例ハザード分析を行って求めた未調整ハザード比は1.71(95%信頼区間1.61-1.83)で、交絡因子候補(年齢、人種、学歴、喫煙歴、BMI、身体活動量、飲酒歴、摂取エネルギー量、糖尿病家族歴、ホルモン療法、元の研究での割り付け群、自己申告による心血管疾患)で調整してもリスク上昇は有意だった(ハザード比1.48、1.38-1.59)。さらに、傾向スコアを調整に加えてもハザード比に本質的な変化は見られなかった(1.40、1.31-1.51)。
次に、スタチン使用期間で患者を層別化し、糖尿病との関係を調べた。スタチン使用が1年未満でも多変量調整ハザード比は1.46(1.30-1.64)と有意なリスク上昇を示し、1年以上3年未満の患者では1.42(1.26-1.59)、3年以上使用している患者では1.57(1.40-1.77)になった。
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Arch Intern Med誌から
スタチン使用の閉経女性は糖尿病発症リスクが高い
大規模観察研究WHIの参加者のデータを分析
2012/01/20
大西 淳子=医学ジャーナリスト
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