ホルモン補充療法(HRT)の代替として注目されている大豆イソフラボンを2年間投与した無作為化試験で、イソフラボンは閉経女性の骨量の維持と更年期症状の改善をもたらさないことが示唆された。米Miami Veterans Affairs Healthcare SystemのSilvina Levis氏らが、Arch Intern Med誌2011年8月8/22日号に報告した。
閉経期の数年間に、骨量減少、ほてり、膣の乾燥、睡眠障害などを経験する女性は多く、HRTはそうした症状の軽減に有効と考えられてきた。しかし、Women's Health Initiativeの研究で、HRTのリスクは利益を上回る可能性が示されたため、HRTを選択する女性は減少した。
一方、アジアの女性を対象とする研究で、大豆関連食品の摂取量が多いと骨粗鬆症を含む健康関連リスクが下がることが示されて以来、大豆のイソフラボンは、「エストロゲンと同様の利益をもたらすがリスクはない、好ましい代替食品」と考えられるようになった。だが、イソフラボンタブレットのような大豆由来サプリメントの摂取の長期的な有効性と安全性について調べた研究はほとんどなかった。そこで著者らはイソフラボンタブレットの骨量減少と更年期症状への影響を調べるため、単一施設で二重盲検の無作為化試験SPAREを行った。
04年7月1日から09年3月31日まで、45~60歳で閉経から半年~5年、卵胞刺激ホルモン(FSH)が40mIU/L以上で、二重エネルギーX線吸収法を用いた骨密度測定に基づいて算出した腰椎または股関節部のTスコアが-2.0以上の女性を登録した。4週間のランイン期間に偽薬を投与し、服薬遵守率が80.0%以上だった248人を、1対1の割合でイソフラボンタブレット200mgまたは偽薬に無作為に割り付け、2年間投与した。200mgという用量は、アジア人が食事によって1日に摂取する目安量の上限値の約2倍だ。200mgのタブレット中には91mgのゲニステインと103mgのダイゼインが含まれていた。
試験期間中のカルシウム摂取量不足を防ぐために、食事からの摂取量が少ない患者にはサプリメント(カルシウムとビタミンD3)を処方した。
主要アウトカム評価指標は、介入開始から2年の時点の腰椎、股関節、大腿骨頸部の骨密度に設定。2次評価指標は、更年期症状、膣上皮細胞の成熟度、骨代謝マーカーの尿中1型コラーゲン架橋N-テロペプチド(NTx、骨吸収亢進の指標)、血清中の脂質、甲状腺刺激ホルモン、甲状腺ペルオキシダーゼに対する自己抗体の値などに設定した。
試験期間中の脱落は66人(26.6%)。イソフラボン群が23人(18.8%)、偽薬群が43人(34.1%)だった(P=0.008)。
介入群の1日のイソフラボン摂取総量は、体重1kg当たり2.05mgから4.50mgだった。
2年後の時点で、イソフラボン群(122人)と偽薬群(126人)の骨密度に有意な差はなかった。ベースラインからの変化は、腰椎が、イソフラボン群-2.0%(95%信頼区間-2.6から-1.4%)、偽薬群-2.3%(-3.1から-1.5%)、股関節部は-1.2%(-1.6から-0.7%)と-1.4%(-2.0から-0.9%)、大腿骨頸部は-2.2%(-2.7から-1.6%)と-2.1%(-2.7から-1.5%)だった。
Ntx値のベースラインからの変化も、イソフラボン群が1.4%(-9.8から12.6%)、偽薬群は-0.2%(-4.9から4.5%)で、両群間の差は有意ではなかった。
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Arch Intern Med誌から
大豆イソフラボンはHRTの代替にならず
閉経女性約250人を対象とした2年間の無作為化試験の結果
2011/08/31
大西 淳子=医学ジャーナリスト
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