日経メディカルのロゴ画像

Arch Intern Med誌から
術前禁煙が遅れても術後合併症は増えない

 喫煙習慣のある患者が手術まで2カ月を切ってから禁煙を始めると、かえって術後合併症のリスクが上昇すると考えられている。だが、実際には、禁煙期間が2カ月未満であっても、合併症リスクの上昇は見られないことが、英London大学Queen Mary校のKatie Myers氏らのメタ分析で明らかになった。論文は、Arch Intern Med誌電子版に2011年3月14日に掲載された。

 喫煙は術後合併症の危険因子と考えられており、入院期間が延びる、再入院が増える、ICUへの入院が増える、院内死亡が増えるといった影響が想定されてきた。これらのリスクを下げるために術前禁煙指導が行われている。

 禁煙期間は長いほどよいはずだが、利益が得られる最短の禁煙時期を示したデータはない。ここ約20年間は、禁煙から手術までの期間が短すぎると利益が得られないばかりか、術後合併症のリスクが上昇すると考えられてきた。これは、89年に行われた非常に小規模で統計学的分析も行われていない研究の結果に基づく懸念だ。

 この研究では、禁煙から手術までの期間が短いと、喀痰量が増えているが気道クリアランスは改善していない時期に手術を受けることになり、術後の肺に悪影響が及ぶと推測されているが、その真偽は明らかではない。質の高いエビデンスがないにもかかわらず、英国などのガイドラインには、肺合併症を抑制するために手術8週前までに禁煙しておくべきだ、という項目が追加された。

 先頃、英国で診療ガイドライン作成を担当するNICE(National Institute for Health and Clinical Excellence)は、専門家を招集して、術前禁煙の時期についての検討を開始した。焦点は、手術まで8週未満となった患者が禁煙すると有害な影響が生じるかどうかに当てられた。

 招集された専門家の1人で今回の論文の著者であるKatie Myers氏と同大学の研究者たちは、文献の予備的な分析を行った。その結果、これまでに行われた研究は主に、術前8週以下で禁煙した患者と、8週より前に禁煙した患者の転帰を非喫煙者と比べていた。著者らは、この3群の比較の結果が示すのは、禁煙期間と禁煙による利益の関係だと考えた。また、患者が本当に禁煙したかどうかを唾液コチニン濃度測定などの方法で確認していない研究が多いことも明らかになった。

 今回は、それらの問題点を念頭に置いて、系統的レビューとメタ分析を行うことにした。British Nursing Index(BNI)、コクランライブラリ、CINAHL、Embase、Medline、PsycINFOに2010年5月までに登録された研究の中から、あらゆる手術を受けた患者で術前8週間以内に禁煙した人々と、喫煙を継続していた人々の術後合併症発生率の比較に利用できるデータを報告していた研究を選出、ランダムエフェクトモデルを用いてプールしたデータを分析した。

この記事を読んでいる人におすすめ