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Ann Intern Med誌から
乳製品のトランスパルミトレイン酸が糖尿病低リスクに関係

 血中の総脂肪酸量に占めるトランスパルミトレイン酸乳製品などに含まれる不飽和脂肪酸)の割合が高い高齢者は、代謝危険因子のプロファイルが良好で、その後の2型糖尿病罹患が有意に少ないことが明らかになった。米Harvard大学のDariush Mozaffarian氏らが行った大規模前向きコホート研究によるもので、論文は、Ann Intern Med誌2010年12月20日号に掲載された。

 著者らが当初注目したのは、トランスパルミトレイン酸ではなく、パルミトレイン酸だ。パルミトレイン酸は体内で合成される炭素数16の一価不飽和脂肪酸で、代謝系に有益という報告と、有害とする報告があった。動物実験では血中のパルミトレイン酸が代謝系に好ましい影響を与えることが示唆されているが、人を対象とした研究では一貫した結果は得られていない。著者らは、その理由が体内の様々な要因の影響を受ける点にあるのではないかと考えた。体内で合成できないトランスパルミトレイン酸を測定すれば、体内の要因と切り離してパルミトレイン酸の代謝系への影響を知ることができると予想し、トランスパルミトレイン酸の血中レベルと代謝危険因子、2型糖尿病リスクの関係を調べる大規模前向きコホート研究を実施した。

 分析対象となったのは、Cardiovascular Health Study(CHS)に参加した3736人の成人だ。CHSは米国で行われた前向きコホート研究で、市中在住の65歳以上の男女5万8881人を1989~92年に登録していた。今回対象となったのは、92年に採取された血液の脂肪酸含有量が測定できた3736人。これらの成人について、総脂肪酸量に占める45種類の脂肪酸量の割合をそれぞれ調べた。

 トランスパルミトレイン酸が脂肪酸全体に占める割合は1%に満たなかった(平均0.18%)。総脂肪酸量に占めるトランスパルミトレイン酸の割合に基づいて対象者を5集団に層別化した。最低5分位群では、トランスパルミトレイン酸の割合の中央値は総脂肪酸の0.13%、第二5分位群では0.16%、第三5分位群は0.18%、第四5分位群は0.21%、最高5分位群は0.25%だった。

 登録時に質問票を用いて調べられた過去3年間の食習慣のデータを利用して多変量解析を行ったところ、トランスパルミトレイン酸高値と最も強力に関係していたのは、全脂肪乳製品の消費量だった。したがって、主な摂取源は乳製品であると考えられた。乳製品の中ではバターよりも全乳の摂取の方が血中トランスパルミトレイン酸高値との関係が強かった。

 続いて、代謝危険因子に対する血漿トランスパルミトレイン酸レベルの影響を分析した。年齢、性別、人種、学歴、喫煙、糖尿病、冠疾患、運動量、飲酒、食事内容などで調整し、多変量解析を行ったところ、トランスパルミトレイン酸最高5分位群では最低5分位群に比べBMIがわずかに低く(-1.8%、P=0.058)。腹囲はわずかだが有意に小さかった(-1.8%、P=0.009)。以下、BMIと腹囲を調整に加えて分析を進めたところ、最低5分位群に比べ最高5分位群では、HDLコレステロール(HDL-c)が高く(1.9%、P<0.043)、トリグリセリドは低く(-19.0%、P<0.001)、総コレステロール/HDL-c比も低く(-4.7%、P<0.001)、炎症マーカーであるCRPは低値(-13.8%、P=0.05)を示し、空腹時インスリンも低値(-13.3%、P<0.001)で、インスリン抵抗性は弱かった(ホメオスタシスモデル評価:HOMAにおいて-16.7%、P<0.001)。

 トランスパルミトレイン酸とLDLコレステロール値、空腹時血糖値、血圧の間に有意な関係は認められなかった。

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