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Neurology誌から
米神経学会が成人脳死ガイドラインを改訂
エビデンスベースの脳死基準作成の難しさを示す

 米神経学会AAN)が成人の脳死判定に関するガイドラインの2010年版をまとめた。Quality Standards Subcommittee of the American Academy of Neurologyのメンバーである米Mayo ClinicのEelco F.M. Wijdicks氏らが、文献レビューの詳細と判定担当医用の実践用チェックリストと共に、Neurology誌2010年6月8日号に発表した。

 著者らは、前回の1995年版の改訂作業に当たり、エビデンスベースのガイドラインの作成を目指した。だが、十分なエビデンスは得られず、今回もまた「オピニオンベースであり、有用なツールであるが、同等の有用性を持つ代替基準も存在しうる」ものになったという。

 米国では、1981年に出された大統領委員会報告書と米国統一死亡判定法(UDDA)において、(1)循環と呼吸の機能の不可逆的な停止、または(2)脳幹を含む脳全体の機能の不可逆的な停止は、人の死であるとされた。脳死の医学的な基準としては、AANが1995年に作成した脳死判定のガイドラインが広く用いられてきた。ガイドラインは、全脳の全機能の不可逆的な停止を確認するためには、既知の原因による昏睡(類似した状態をもたらす疾患と区別するため)、脳幹反射の消失、無呼吸という3つの臨床所見が必須としている。

 しかし、実際に米国内で行われてきた脳死判定にはばらつきが存在し、脳死と診断された患者のカルテには記録不足が広く見られた。そこで著者らは、エビデンスベースの脳死判定法を提案したいと考えた。そのためには、判断の揺らぎに影響を与えると考えられる以下の5つの問いに対する答えを得る必要があった。

(1)脳死基準を満たした成人患者の神経機能が回復することがあるか

(2)神経機能が永久に失われたことを保証する最短の観察期間は何時間か

(3)脳機能が維持されていると思わせるような複雑な運動が脳死者に見られることはあるのか。

(4)複数ある無呼吸判定技術の相対的な安全性はどうか

(5)脳死判定をより確実にする新たな補助的な検査はあるか

 これらに対する回答を探し出すために、著者らは文献レビューを行った。1996年1月から2009年5月までにMEDLINEとEMBASEに登録された文献の中から、18歳以上を対象とする研究を選出。条件を満たしたのは38件だった。

 まず、(1)だが、95年のANAガイドラインに基づいて脳死と判断された患者において、その後神経機能が回復したという報告は1件もなかった。

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