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Nature誌から
日本人でブタ由来H1N1の中和抗体を保有するのは90歳以上
マウスやカニクイザルで強い病原性も確認

 ブタ由来A/H1N1インフルエンザウイルス(S-OIV)が、季節性A/H1N1ウイルスに比べて肺で効率良く増殖し、肺病変はより重症になることが、日本の研究者グループによる動物実験で判明した。また、様々な年齢の日本人に由来する血清を調べたところ、S-OIVと抗原性が類似しているスペインインフルエンザ(A/H1N1)の流行より前に出生した人に、S-OIVに対する中和抗体が存在することも明らかになった。滋賀医大の伊藤靖氏、東大医科学研究所の河岡義裕氏らが、Nature誌電子版に2009年7月13日に報告した。

中和抗体を保有する日本人のほとんどが1918年以前に出生
 著者らは、米国で最初に分離されたS-OIV株の1つであるA/California/04/09(CA04)と、2009年の季節性H1N1であるA/Kawasaki/UTK-4/09(KUTK-4)に対する中和抗体の存在を、幅広い年齢の人々から得た血清を対象に調べた。

 血液提供グループ1は、ある老人ホームに入所している高齢者とそこで働く60人の人々からなり、採血は1999年に行われていた。血液提供グループ2は、ある病院の患者とそこで働く人々255人からなり、2009年4月に血液の提供を受けた。

 2009年の季節性H1N1であるKUTK-4に高い中和活性を示した人は、グループ2に多く存在し、グループ1にはほぼ見られなかった。

 一方、CA04に対する中和抗体価が8倍以上を示した人のほとんどは、1918年より前に出生していた(現時点での年齢90歳以上)。スペインインフルエンザが終息した1920年以降に生まれた人の中にも、わずかながらCA04に対する中和抗体を有する人が存在した。

 ヒトH1N1の流行は、1920年代から50年代にかけてと1977年以降にも見られたが、S-OIVに対する中和抗体は、1918年のスペインインフルエンザまたはそれと近縁のH1N1に感染したことのある人に存在すると考えられた。

哺乳類の肺で効率よく増殖
 これまでのところS-OIVに感染した人々の症状は多くが軽症だが、一部に基礎疾患のない人の入院が報告されている。現段階で、S-OIVの病原性と感染性についてより詳しい情報を得ることは非常に重要だ。

 著者らは、このウイルスの危険性についてin vitroとin vivoで分析するために、S-OIVとしてはCA04と、A/Wisconsin/WSLH049/09(WSLH049)、A/Wisconsin/WSLH34939/09(WSLH34939)、A/Netherlands/603/09(Net603)、A/Osaka/164/09(Osaka164)を用いた。これらの中で、入院を必要とした患者に由来するウイルスはWSLH34939のみで、それ以外のウイルス株は軽症患者から分離されたものだ。対照には主にKUTK-4を用いた。

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