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Science誌より
新型ウイルスの早期検出にはブタ集団の監視が重要

 メキシコと米国で分離されたインフルエンザウイルス2009A(H1N1)のゲノム配列を解読した米疾病対策センター(CDC)のRebecca J. Garten氏らは、このウイルスのブタでの循環が長期にわたって検出されずに続いていたこと、さらにこのウイルスのヒトへの適応には未知の配列が関与していることが示唆されると発表した。新たなウイルスを早期に検出するためには、ブタの集団の監視が重要であることを示す結果だ。詳細は、Science誌電子版に2009年5月22日に報告された。

 著者らは、2009A(H1N1)ウイルスの起源と特徴を明らかにするために、メキシコで分離された17株と米国12州で分離された59株の遺伝子配列を解読した。

ユーラシア系統の分節を初めて確認
 まず、8分節の遺伝子の起源を調べたところ、すべての分節は過去に鳥インフルエンザウイルスに存在しており、1918年から1998年までの間にブタで循環するようになったと考えられた。うち6分節(PB2、PA、PB1、HA、NP、NS)は、トリプル再集合体ウイルス(ヒト型、トリ型、ブタ型のH1インフルエンザウイルスの遺伝子再集合体)に由来していた。

 残りの2分節(NAとM)はユーラシア豚インフルエンザウイルス由来だった。ユーラシア系統のウイルスのNAとMは、1979年にユーラシアのブタで発見されて以来、ユーラシア全体で循環してきたが、ユーラシア外で見付かったのは、これが初めてだ。

 PB2とPAはトリプル再集合体系統に見付かった分節だ。鳥インフルエンザウイルスに由来するこれらの分節が北米のブタに入ったのは1998年ごろと考えられた。またPB1は、1968年ごろにトリからヒトのインフルエンザウイルスに移り、1998年ごろにヒトのウイルスからブタのウイルスに入り込んだと考えられた。

 一方、HA、NP、NSは古典的な豚インフルエンザウイルスの系統だった。これらの分節は1918年前後にブタへの感染を開始し、古典的なウイルスとして、またトリプル再集合体ウイルスとして、これまで循環していた。

2009A(H1N1)は検出されずにブタの中で循環
 ゲノム配列を他のインフルエンザウイルスと比較したところ、最も近縁の株であっても、進化上は離れていることが明らかになった。従って、2009A(H1N1)は、長期にわたって検出されることなくブタの中で循環していたと考えられた。このことは、ブタを対象とするサーベイランスが適切に行われていなかったことと、新たなウイルスを早期に検出するためにはブタの集団の監視が重要であることを明確に示している。

 なお、引き続きヒトの間で感染を繰り返している2009A(H1N1)ウイルスには、1918H1N1などに見られるような、ヒトへの感染に適応したことを示すマーカーは見付からなかった。従って、このウイルスのヒトへの感染と人体内での増殖には、未知の配列が関わっていると考えられた。

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