日経メディカルのロゴ画像

Science誌から
酒に弱い人は心虚血後の組織損傷が大きくなる
ALDH2が心虚血後の組織損傷を抑制

 心筋梗塞や特定の手術による虚血は心組織の損傷を引き起こすが、これを予防する薬物療法に関心が集まっている。米Stanford大医学部のChe-Hong Chen氏らは、ミトコンドリアに局在するアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)の活性が高いと虚血による心組織の損傷が少ないこと、さらに、薬物療法によりALDH2活性を上昇させれば心保護効果が得られる可能性を、ラットモデルを使って示した。詳細は、Science誌2008年9月12日号に報告された。

 アセトアルデヒドはアルコールの第一代謝産物であり、アセトアルデヒドを分解するALDH2の活性が低い人は、一般に“酒に弱い”。東洋人では、約4割が不活性型(ALDH2*2、飲酒困難という表現型を示す)または非常に活性が低いタイプ(正常型のALDH2*1とALDH2*2のヘテロ接合体、酵素活性は正常型の6%程度)のALDH2を持つが、白人や黒人はほぼ100%が活性型ALDH2を有する。

 ALDH2低活性は、アセトアルデヒド代謝の遅延を介して食道癌などのリスクを高めると報告されているが、著者らが注目したのは、虚血による心組織の損傷へのALDH2の関与だ。

 非致死的な虚血イベントが繰り返されると、虚血から心組織を保護するメカニズム(preconditioning)が発動される。虚血なしに心保護システムのスイッチを入れることができる薬剤の探索が進められており、これまでに、アデノシン、エタノール、プロテインキナーゼε(PKCε)活性化薬が、preconditioningと同様の心保護効果を与え、虚血後の組織損傷を縮小することが明らかになっている。

 これと並行して、保護効果を仲介するたんぱく質を探す研究も行われてきたが、発現自体、またはリン酸化レベルが心保護効果と関連付けられた分子はこれまでなかった。

 著者らは、ラット心臓に心保護作用のある薬剤を作用させると、リン酸化のレベルとパターンが変化する蛋白質を探した。Ex vivo研究には、Langendorff法(摘出した心臓の大動脈から逆行性に心筋を灌流する)を用いた。

 還流液にエタノール(50mM、10分)、PKCεに対する選択的阻害薬と選択的活性化薬を加えて5~10分前処理した後に、30分間還流を停止し虚血状態とする。この心臓のホモジェネートを作製し、二次元電気泳動法、抗リン酸セリン抗体、抗リン酸化スレオニン抗体、抗ALDH2抗体を用いたウェスタンブロットを適用して、心臓保護作用の活性化と阻害によりリン酸化のレベルとパターンが変化するたんぱく質を同定。これがミトコンドリアのALDH2だった。

 なお、エタノールとPKCε阻害薬で同時に処理した場合には、心保護効果は弱まり、ALDH2のリン酸化パターンは元に戻ることから、エタノールの心保護効果はPKCε依存的に生じることが判明した。

この記事を読んでいる人におすすめ