医療事故が起こる頻度、その深刻度および原因などの情報収集は、患者の安全をより確かなものにするために極めて重要だ。米国Iowa大学のLauris C. Kaldjian氏らは、医療事故に関する報告を促進する要因、ためらわせる要因について調査し、報告を増やすために何をすべきかを探った。詳細は、Arch Intern Med誌2008年1月14日号に報告された。
対象となった施設は、調査開始時に適切な事故報告システムを持っていた、米国中西部、中部大西洋岸地域、北東部の3つの教育研修病院。医師とレジデントに質問票を配布し、匿名による回答を依頼した。教育を担当する医師138人(内科医53人、家庭医21人、小児科医64人)とレジデント200人(内科135人、家庭医科12人、小児科53人)から回答を得た。
まず、実際の事故について、軽度の事故(治療期間延長または患者に不快な症状をもたらした)、重大な事故(障害または死亡が発生)の経験があるか、それについて報告したかどうかを質問した。
報告したか否かにかかわらず1回以上の事故を経験していた回答者は35.6%(医師の50.9%、レジデントの25.8%)いた。医療訴訟の被告人になったことがある人は、医師の22.2%、レジデントでは0.5%だった。
軽度の事故を報告した経験がある人は17.8%、重大な事故を報告したと回答した人は3.8%だった。反対に、16.9%が軽度の事故を報告しなかったことを、3.8%が重大な事故を報告しなかったことを認めた。報告したグループと報告しなかったグループには、重複はほとんど無かった。
次に、報告に対する考え方を問うために、以下の仮想事例を提示した。
その後、
1)有害事象なし――翌朝医療記録を見てアレルギーの存在を知り、患者の様子を見たがアレルギー反応は認められなかった。抗菌薬を変更した。
2)軽度の事故――翌朝の診察で全身性の発疹とかゆみがあり、抗菌薬を変更。セファロスポリンに対する反応は3日間持続して消失した。
3)重大な事故――2時間後にコール。患者の呼吸がひっ迫、アナフィラキシーショックを呈する。集中治療室に運び処置して、症状は安定化。3日後に一般病棟に移った。
※小児科の専門医とレジデントには、患者を7歳の少年に変更した仮想事故例を提示。