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BMJ誌から
癌患者の化学療法副作用リモートモニタリングは有用
欧州5カ国の癌センターが参加した評価者ブラインドの臨床試験

 COVID-19パンデミックにより、癌治療がこれまでのように行えなくなっている。英国Strathclyde大学のRoma Maguire氏らは、癌の化学療法に関連する副作用をリモートでモニタリングするAdvanced Symptom Management System(ASyMS)の有用性と安全性を検討する臨床試験eSMARTを行い、ASyMSの使用により通常の治療と比較して不安が減少しQOLを高く保つなど、治療に伴う患者の負担を軽減することが示唆されたと報告した。結果は2021年7月21日のBMJ誌電子版に掲載された。

 化学療法を受ける患者では、治療に伴う症状のコントロールが不十分になりがちだ。このような状況が続くと、アドヒアランスが不良になり、QOLを妨げ、医療サービスの利用を増やし、死亡リスクを上昇させる可能性がある。現行の症状評価方法は、患者がその症状を報告する必要があると認識するかどうかに左右されるため、報告が遅れ、ケアも遅れる不確実性を伴う。

 コミュニティで暮らしている癌患者をリモートでモニタリングする技術を用いると、患者はいつでも症状を報告することができ、データはすぐに担当医に伝達される。そのため、次の受診時にどんな症状だったかを思い出す想起バイアスを減らすことができ、医師の対処も早くなる。これまでの研究では、リモートモニタリングの導入により、QOLの向上、症状の緩和、予期せぬ入院の回避、生存利益、費用対効果の向上などが期待できると報告されている。しかし、それらはいずれも、単独施設や1カ国で行われた小規模で短期間の研究で、癌のステージが進行した患者を対象にしたものだった。

 そこで著者らは、リモートモニタリングの有効性について、より信頼性の高いエビデンスを得るために、複数国の施設が参加する規模の大きい臨床試験を実施することにした。検討する仮説は、ASyMSを通じて化学療法を受けている患者の症状をモニタリングすると、通常の治療に比べ、症状による負担や不安を軽減し、対症療法の必要性が減り、就労制限が緩和され、QOLが改善するというものだ。

 eSMART試験に参加したのは、オーストリア、ギリシャ、ノルウェー、アイルランド、英国の癌センター12施設だ。対象にした患者は、年齢が18歳以上、診断は乳癌・大腸癌・ホジキン病・非ホジキンリンパ腫のいずれかで、3サイクル以上の補助化学療法または初回の化学療法を受ける予定の患者だ。治療により癌の治癒が期待できる患者に限定した。癌の転移がある患者、放射線治療を併用する患者、過去5年間に化学療法を受けた患者、インフォームドコンセントが得られない患者、などは組み入れから除外した。

 ASyMSは化学療法の毒性を24時間リアルタイムに監視するシステムで、患者には、スマートフォンを使って、1日1回、および体調が悪いと感じたときに、Daily Chemotherapy Toxicity Self-Assessment Questionnaire(DCTAQ)に回答するよう依頼した。DCTAQは10通りの症状(悪心、嘔吐、下痢、便秘、粘膜炎、錯感覚、手と脚の痛み、インフルエンザ様症状/感染症、疲労感、疼痛)を報告するもので、それ以外の最大で6つの症状を追加でき、デジタル体温計で測った体温の入力を求める。

 患者が入力したデータはASyMSサーバに送られて、参加施設や国または欧州の症状管理ガイドラインに照合され、エビデンスベースの臨床判断システムの評価を受ける。病院にいる臨床医には、患者に軽症から中等症の症状が認められ、早期の介入により進行が予防できる可能性がある場合には黄信号が、好中球減少性敗血症のような危険な状態なら赤信号が送信される。受診した医師は、黄信号なら8時間以内に、赤信号では30分以内に対応することが求められる。医師たちは、症状管理プロトコルに基づいて、患者が報告している症状をチェックし、対応を決定して、その内容を詳しく入力することになっている。介入群に割り付けられた参加者は、最長で6サイクルまでASyMSを利用する。

 主要評価項目は症状による負担とし、Memorial Symptom Assessment Scale(MSAS)を用いて評価した。MSASは、患者に過去1週間の症状の有無、発生頻度、重症度を質問することにより、癌関連の身体的および心理的な32の症状について評価するものだ。スコアは高い方が負担が大きい。

 副次評価項目は、健康関連QOL(Functional Assessment of Cancer Therapy-General;FACT-Gを用いて評価、スコアが高い方が健康状態良好)、対症療法の必要性(Supportive Care Needs Survey Short-Form;SCNS-SF34を用いて評価)、不安(State-Trait Anxiety Inventory-Revised;STAI-Rを用いて評価)、自己効力感(Communication and Attitudinal Self-Efficacy Scale for Cancer;CASE-Cancerを用いて評価)、就労している患者には就労制限(Work Limitations Questionnaire;WLQを用いて評価)などに設定した。

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