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BMJ誌から
クロピドグレルとPPIの併用で心筋梗塞リスクは上昇せず
自己対照ケースシリーズ研究の結果。同じデータベースを用いた従来型観察研究ではリスク上昇

 クロピドグレルとアスピリンを使用している患者がプロトンポンプ阻害薬PPI)を併用しても、心筋梗塞のリスクは上昇しない―。そんな結果が、英London衛生熱帯大学院のIan J Douglas氏らが行った自己対照ケースシリーズ研究で得られ、BMJ誌電子版に2012年7月10日に報告された。ただし、同じデータベースを用いた従来型の観察研究では、併用による全死因死亡や心筋梗塞のリスク上昇が認められた。

 クロピドグレルは急性冠症候群または虚血性脳卒中の後に、血管イベント予防を目的として投与される抗血小板薬で、アスピリンが併用されることが多い。これらはいずれも出血リスクを高めるため、消化管出血を抑制する目的で、しばしばPPIが処方される。

 しかし近年、一部または全てのPPIが、クロピドグレルの作用を減じるのではないかという懸念が高まっている。クロピドグレルの作用の発現には肝代謝酵素であるチトクロームP450 2C19が必要であり、PPIはこの酵素を阻害するからだ。しかし、これまでに行われた研究は一貫した結果を示しておらず、併用した患者に血管イベントが増えたとする研究と、リスク上昇はないと報告した研究があった。

 著者らは、併用の影響が臨床的に意義のあるレベルなのかどうかを明らかにしようと考え、英国の複数のデータベースを組み合わせて、2通りの観察研究を実施した。1つ目は一般的なコホート研究、2つ目は自己対照ケースシリーズ研究だ。自己対照研究は、隠れた交絡因子を調整するために有効な研究手法とされている。

 英国の一般開業医研究データベース(600人を超える一般開業医が登録した1100万超の患者データを収集)と、全国心筋虚血調査プロジェクト(MINAP;1999年からイングランドとウェールズの急性期病院トラスト230施設で治療を受けた心筋虚血患者のデータを収集)、国家統計局(ONS;全ての死亡に関する情報を収集)に登録されている情報を結びつけて、03年1月1日から09年7月31日までにクロピドグレルとアスピリンを使用していた2万4471人の患者を選出。生死や心筋梗塞発生の有無などの情報を得た。

 これらの患者について、あらゆる種類のPPIの使用歴と使用期間を調べ、使用歴があった患者については追跡期間中の使用期間と非使用期間を特定した。

 主要転帰評価指標は全死因死亡と心筋梗塞を合わせた複合イベントとし、2次評価指標は全死因死亡、心筋梗塞、血管疾患死亡、非血管疾患死亡に設定した。一般的な観察研究では、PPIを使用している患者と使用していない患者の間で比較を行った。自己対照ケースシリーズ研究では、心筋梗塞を経験した患者を対象に、PPIの使用期間と非使用期間における心筋梗塞発生率を比較し、罹患率比を求めた。

 2万4471人を303日(中央値)追跡した。散発的な投与も含めて試験期間中のいずれかの時点でPPIを使用していた患者は1万2439人(50%)だった。

 複合イベントは、PPI使用中の患者の1419人(11%)、非使用中の患者の1341人(8%)に発生した。年齢、性別、BMI、喫煙歴、飲酒量、糖尿病、末梢血管疾患、冠動脈疾患、虚血性脳卒中、癌の既往などで調整し、非使用者と比較したPPI使用者のイベント発生のハザード比を求めたところ1.37(95%信頼区間1.27-1.48)になった。

 全死因死亡は計2228人(9%)で、PPI使用中の患者の死亡は1170人(9%)、非使用中の患者の死亡は1058人(6%)、使用群の調整ハザード比は1.40(1.29-1.52)になった。心筋梗塞は734人で、PPI使用者は365人(2%)、非使用者は369人(2%)、調整ハザード比は1.30(1.12-1.50)。血管死亡は1226人で、PPI使用者が612人(5%)、非使用者は614人(4%)で調整ハザード比は1.25(1.12-1.40)。非血管疾患死亡は1002人で、PPI使用者は558人(4%)、非使用者では444人(3%)、調整ハザード比は1.61(1.42-1.82)と、いずれもPPI使用者で有意なリスク上昇が認められた。

 感度解析として、CYP450 2C19阻害作用が強力なオメプラゾール、ランソプラゾール、エソメプラゾールに限定した分析も実施したが、結果は同様だった。複合イベントの調整ハザード比は1.39(1.29-1.50)、全死因死亡は1.43(1.31-1.56)、血管死亡は1.28(1.15-1.44)、非血管死亡は1.71(1.51-1.94)になった。

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