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BMJ誌から
アルツハイマー病と癌の罹患に逆相関
癌サバイバーはADリスクが低く、AD患者は癌リスクが低い

 高齢者のサバイバーは、癌の既往がない高齢者に比べてアルツハイマー病AD)の罹患リスクが33%低く、AD患者の癌罹患リスクもまた、ADでない患者に比べて61%低いことが、米Brigham and Women’s HospitalのJane A Driver氏らがFramingham研究の参加者を対象に行った前向きコホート研究で明らかになった。論文は、BMJ誌電子版に2012年3月12日に掲載された。

 癌サバイバーのADリスクは低く、AD患者の癌リスクは低いことを示唆した報告はこれまでにもあった。パーキンソン病と癌の間にも同様の関係が指摘されている。ADやパーキンソン病などの神経変性疾患ではアポトーシスが活性化されており、癌では逆にアポトーシスは起こらず異常な細胞増殖が続く。これら2通りの疾患では相反する経路が活性化されていることから、それぞれの罹患リスクにも逆相関の関係が見られる可能性は想定できる。しかし、これまでに行われた研究については、「癌サバイバーはAD発症前に癌で死亡しているのではないか」との疑念が提示されたり、「ADを発症すると癌のスクリーニングを受ける機会が減るだろう」という推測に基づく批判が行われてきた。

 そこで著者らは、想定されるバイアスを極力排除して、ADと癌の関係を調べようと考えた。対象に選んだのはFramingham Heart Studyの登録者だ。

 この研究は1948年に始まったコホート研究で、オリジナルコホートに登録された人々は2年ごと(子孫研究に登録された人々は4年ごと)に医療歴の調査と診察、一連の検査を受けた。その際に、癌の罹患と、認知症またはAD罹患についても、情報収集や検査を受けた。

 今回の分析はまず、Framingham Heart Studyに登録された人々のうち、1986~90年(ベースライン)に65歳以上で認知症ではなかったオリジナルコホートの1278人を対象に、ベースラインで癌の既往があった癌サバイバーのその後のAD罹患リスクを調べる前向きコホート研究を行った。次に、オリジナルコホートと子孫コホートを対象に、AD罹患者とそうでない人々のその後の癌罹患リスクを評価するネステッドケースコントロール研究を行った。

 1278人中38.8%が男性だった。癌サバイバーは176人で、平均年齢は77歳。癌の既往がない人々の平均年齢は76歳だった。

 追跡期間は最長22年で、平均は10年だった。その間に認知症と診断された患者は323人で、それらのうち221人(86%)がprobable AD(ADの高可能性例)と診断された。また36人はpossible AD(ADの可能性例)と判断された。ADではない認知症患者66人のうち、24人はレビー小体型認知症、15人が脳血管型認知症、2人が前頭側頭型認知症、25人がその他の認知症に分類された。

 ベースラインで癌の既往があった癌サバイバーのprobable ADリスクは低かった。年齢、性別、喫煙歴と追跡期間中の癌罹患で調整したハザード比は0.67(95%信頼区間0.47-0.97)。Possible AD(ハザード比0.81、0.59-1.11)とあらゆる認知症(0.83、0.63-1.10)のリスクも低下傾向を示した。

 Probable ADのハザード比は、喫煙関連の癌(口腔癌、咽頭癌、喉頭癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、肺癌、子宮頸癌、膀胱癌、腎臓癌)のサバイバーで顕著に低く、0.26(0.08-0.82)だった。一方で、喫煙と関係しない癌のサバイバーでは、probable ADリスク低下は有意にならなかった(ADのハザード比は0.82、0.57-1.19)。

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