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BMJ誌から
制酸薬は高齢者の術後肺炎リスクを高めない

 制酸薬は、胃酸が関係する上部消化管イベントのリスクは減らすが、胃や食道での細菌増殖を容易にして吸引性肺炎のリスクを高めると考えられている。そこで、カナダToronto大学のDonald A Redelmeier氏らは、待機的手術を受けた高齢者を対象に、制酸薬使用者と非使用者の術後肺炎発症率に差があるかどうかを比較する後ろ向きコホート研究を行った。この結果、制酸薬使用者に肺炎リスク上昇は認められなかった。論文は、BMJ誌電子版に2010年6月21日に報告された。

 過去にICUで行われた大規模試験は、制酸薬が人工呼吸器関連肺炎リスクを2~3倍に高めると報告している。一方で、外来患者を分析した研究では、制酸薬の処方が市中肺炎リスクを高めることはないと結論していた。

 そこで著者らは、制酸薬の使用が待機的手術を受ける高齢者の術後肺炎リスクを高めるかどうかを調べる大規模研究を実施した。

 待機的手術のためにカナダの急性期病院に1992年4月1日から2008年3月31日までに入院した65歳超の患者に関する情報を、カナダ健康情報研究所のデータベースから抽出した。待機的手術を受けた患者に限定したのは、手術時に肺炎ではなかったことが確認されているからだ。

 入院前1年間の処方記録から制酸薬使用の有無を判定した(この研究が行われた期間中、カナダでは制酸薬はOTCではなかった)。以下の薬剤の処方の有無と、処方されていた場合には用量と処方期間を調べた:PPIのランソプラゾール、オメプラゾール、パントプラゾール、ラベプラゾール;H2ブロッカーのシメチジン、ファモチジン、ニザチジン、ラニチジン;その他の制酸薬として、水酸化アルミニウム、ミソプロストール、スクラルファート。

 手術の前に2~3回制酸薬処方があり、うち1回は術前90日の処方だった患者を制酸薬使用者とし、それ以外を対照群とした。用量については、中央値以下と、それを上回る高用量の2群に分けた。

 269病院で4195人の外科医による手術を受けた59万3265人を分析対象とした。平均年齢は74歳で、腹部、筋骨格、下部尿生殖器などの手術が多く行われており、麻酔時間の平均は132分、入院期間の中央値は4日だった。

 21%(12万1850人)が制酸薬使用者だった。最も多く投与されていたのは、H2ブロッカーのラニチジン(4万5531人)とPPIのオメプラゾール(2万5948人が使用)だった。

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