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BMJ誌から
ARB使用者はアルツハイマー病や認知症の発症リスクが低い
約80万人を分析対象とした前向きコホート研究の結果

 心血管疾患を有するためにアンジオテンシンII受容体拮抗薬ARB)を使用している高齢者は、ほかの心血管疾患治療薬やアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬の使用者に比べ、アルツハイマー病(AD)と認知症の発症・進行のリスクが低いことが示唆された。米Boston大学医学部のNien-Chen Li氏らが、前向きコホート研究の結果をBMJ誌電子版に2010年1月12日に報告した。

 アルツハイマー病(AD)を含む認知症の危険因子としては、年齢、脳内のアミロイドβの蓄積、心血管系の異常などが知られている。また、中年期に心血管危険因子を保有していた人々は、そうでない人々に比べてその後の人生で認知症になるリスクが高いという報告もある。

 こうしたことから、著者らは、心血管危険因子を改善する薬剤を投与すれば認知症リスクが下がるのではないかと考えた。既にARBが認知機能の維持に役立つことを示唆する報告が複数あったため、ARBが認知症とADの発症に及ぼす影響と、既にこれらの疾患と診断されている患者において進行に与える影響を明らかにしようと、前向きコホート研究を計画した。

 ARBとの比較対象は、ACE阻害薬のリシノプリルと他の心血管疾患(CV)治療薬(ARB、ACE阻害薬、スタチン使用者は除外)とした。リシノプリルをACE阻害薬の代表にしたのは、今回の対象者に最も多く処方されており、米国での歴史が最も長いACE阻害薬だからだ。

 米国の退役軍人医療システム意思決定支援データベースに、02~06会計年度に登録された約730万人に関する情報を分析した(98%が男性)。

 主要アウトカム評価指標は、心血管疾患に対する治療薬の使用開始からADまたは認知症発症までの期間と、これらの患者が薬剤の使用を開始してから介護施設に入所するまで、または死亡するまでの期間とした。年齢、糖尿病、脳卒中、心血管疾患で調整し、Cox比例ハザード分析を行った。

 ADまたは認知症の発症に関する分析は、02年にこれらの疾患ではなかった人々、または02年以降に心血管疾患に対する治療が始まった人々を対象とした。認知症とADの進行に対する影響の評価は、既にこれら疾患と診断されていた人々を対象に行った。

 65歳以上で心血管疾患と診断されている81万9491人が、AD発症に関する分析の対象となった。うちARB使用者は1万1703人、リシノプリル使用者は9万3484人、他のCV薬使用者は71万4304人だった。 

 認知症発症に関する分析の対象になったのは79万9069人で、ARB使用者は1万1507人、リシノプリル使用者は9万1164人、他のCV薬使用者は69万6398人だった。

 既にADと診断されていた患者は1万2574人で、476人がARB、3227人がリシノプリル、8871人が他のCV薬を使用していた。

 同様に、既に認知症と診断されていた患者は4万4601人で、ARB使用者は1920人、リシノプリル使用者は1万2064人、他のCV薬使用者は3万617人だった。

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