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BMJ誌から
経口エストロゲンのホルモン補充療法で静脈血栓塞栓症リスクが上昇
経皮エストロゲンではリスク上昇せず

2008/06/12
大西 淳子=医学ジャーナリスト

 経口エストロゲン製剤は閉経女性の凝固系を活性化するとの報告があるにもかかわらず、ホルモン補充療法静脈血栓塞栓症VTE)リスクは軽視されてきた。今回、メタ分析により、現在の経口エストロゲン製剤の使用状況は、VTEリスクを2~3倍上昇させること、経皮エストロゲン製剤の場合にはリスク上昇はないことが明らかになった。フランスInsermのMarianne Canonico氏らの報告で、詳細はBMJ誌電子版2008年5月20日に掲載された。

 ホルモン補充療法は、低エストロゲン症状による更年期障害に対する治療として、女性の生活の質を高め、骨粗鬆症による骨折も予防する。しかし先ごろ、長期にわたる治療により、乳癌やVTE、冠疾患、脳卒中などのリスクが上昇することから、リスクが利益を上回ることが示されされている。そこで著者らは、ホルモン補充療法を受けている女性のVTEリスクを評価する系統的レビューとメタ分析を実施した。

 ホルモン補充療法に関する研究で、VTEについて報告している論文を「Medline」から抽出した。1974年から2007年に登録された研究報告の中から、条件を満たしたものについて質を検討し、より質が高い研究(観察研究8件と無作為化試験9件)を選んだ。

 臨床試験のデザイン(観察研究または無作為化試験)、治療の特徴(投与経路、用いられたエストロゲンの種類、エストロゲン単独かプロゲステロン併用か、治療期間)、VTEの特性(特発性または2次性、深部静脈血栓症または肺塞栓症、VTE診断法)などに留意して分析を進めた。過去1カ月から6カ月までの間にホルモン補充療法を受けた女性を現在の使用者とした。

 投与されていたのは、17-β-エストラジオール、結合型ウマエストロゲン、エステル化エストロゲンのいずれかだった。多くの研究が、エンドポイントを初回の特発性VTE(深部静脈血栓症と肺塞栓症)に設定していた。診断には、主に超音波検査(深部静脈血栓症)と、肺スキャン(肺塞栓)が用いられていた。

 観察研究のメタ分析では、エストロゲンの投与経路別にリスクを評価した。その結果、経口エストロゲン製剤の使用はVTEリスクを高めるが、経皮エストロゲン製剤にリスク上昇は見られないことが示された。エストロゲン非使用者に比べ、経口エストロゲンの現在の使用者では、初回VTEのオッズ比は2.5(95%信頼区間1.9-3.4)、経皮エストロゲンの現在の使用者では1.2(0.9-1.7)となった。

 9件の無作為化試験の結果は、経口エストロゲン製剤によるVTEリスク上昇を確認した(プールしたオッズ比は2.1、1.4-3.1)。経皮エストロゲンのVTEリスクを調べた無作為化試験はなかった。

 観察研究と無作為化試験のデータを合わせると、経口エストロゲンのオッズ比は2.4(1.9-3.0)となった。

 エストロゲンのタイプによるリスクの差を調べていた1件の研究は、結合型ウマエストロゲンはVTEリスク上昇をもたらし、エステル化エストロゲンにはそうした作用がないと報告していた。

 経口エストロゲンの過去の使用者のリスクを使用歴なし群と比較していた研究は4件で、すべて観察研究だった。プールしたオッズ比は1.2(0.9-1.7)で、リスク上昇は見られなかった。

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