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EASD2014に参加して●柴 輝男 氏(東邦大学医療センター大橋病院教授)
印象に残った「ファーストインパクト」の重要性

2014/09/30
談話まとめ:欧州糖尿病学会取材班

柴 輝男 氏●東邦大学医療センター大橋病院糖尿病・代謝内科教授

 今回のEASD(EASD2014)に参加して強く印象に残ったのは、「ファーストインパクト」の重要性でした。大会初日の製薬企業主催シンポジウムから参加しましたが、インクレチンおよび関連薬で一色だった数年前と比べて、インスリンやSGLT2阻害薬など、話題がかなり多様になっていました。その中で自分が出席して印象に残ったのは、Novo Nordisk社のシンポジウムで肥満を取り上げたパートでした。

 現在まで多種多様な糖尿病薬が出ていますが、世界的に見て糖尿病の発症はなかなか減らない。さらには心血管疾患も、癌も減らない。つまり、諸悪の根源にある肥満への積極介入を本格的に考えなければいけないという状況です。シンポジウムでは、食欲や肥満に対して明らかになっているメカニズム、それらに対して我々は今どんな手立てを持っているのかを整理して解説してくれました。

 米国の“DPP”(Diabetes Prevention Program)やLook AHEAD研究において、生活習慣改善による体重減少効果は8%程度。胃にバンドを付けたり小腸をバイパスして摂食・吸収量を抑えるバリアトリック手術では16~32%といったところです。その間をいかに内科治療で埋めるかが喫緊の課題です。

 米欧日で販売状況は異なるものの、抗肥満薬の投与も行われています。いずれの減量治療にしても、減量効果が最も大きいのは最初の数カ月から1年程度、下がった体重を長期にわたってキープする方法の実現は難しい。そうである以上、最初にどれだけ体重を減らすか、つまり「ファーストインパクトが重要」という認識を新たにしました。

 その意味で、2日目からのScientific Programでも注目される報告がいくつかありました。まず目を引いたのがSCALE試験で、GLP-1受容体作動薬のリラグルチド1.8mg(欧米で承認されている最大用量)と3.0mgの2用量について、BMI≧27.0kg/m2の2型糖尿病患者に投与した結果を比べたものです。HbA1cの低下量は両群で有意な差はありませんでしたが、体重は3.0mg群で有意に減少しました。GLP-1は高用量にするほど、体重減少の効果が大きくなると言われていました。この試験によって肥満に対するGLP-1受容体作動薬の高用量投与が実用化する方向に、欧米ではいち早く進むと思います。

 脂肪細胞の慢性炎症に関するシンポジウムでは、慢性炎症が糖尿病の発症だけでなく血管にも直接的に作用するという知見も非常に興味深かった。やはり、肥満への介入は待ったなし。日本でも糖尿病予備軍の肥満者に我々糖尿病医が早期介入する手段を考えなければならないでしょう。

中年期の糖尿病発症、最初の一手でどれだけ下げるか
 ファーストインパクトが重要であるのは、血糖コントロールも同様です。現状の血糖降下療法はどれも単体では、HbA1cを最初に減らしても、長期では徐々に上昇してしまいます。そのため、治療を始めて最初の数週間から数カ月でどれだけ減らすかがその後の血糖コントロールに大きく影響します。40歳代や50歳代という中年の発症早期では、その意義はさらに大きい。

 そうした観点から注目されたのが、メトホルミンへのDPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬の併用です。欧米における経口血糖降下薬の第一選択はメトホルミンで、DPP-4阻害薬の併用が次の一手としてスタンダードとなりつつある中、さらにSGLT2阻害薬の併用による効果を示す報告が目を引きました。

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